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遠いところのhrmのレビュー・感想・評価

遠いところ(2022年製作の映画)
4.0
ずっと観たかったのだけど128分と長めな上に重たそうな内容で、仕事終わりにいつ観ようかタイミングを伺っていたところで、職場での監督の舞台挨拶付き上映のお話が舞い込んだ。

Podcastで聴いた、肯定的意見と否定的な意見。
お客さんとして来てくれたギャルい見た目の若年層の女の子たちの「自分のことを観ているみたいで辛かった」という感想(この子たちは普段シアドにくる層ではなくて、おそらくこの映画を観るために初めて来てくれた子たち。そして、自分のことみたいな映画なんだろうなとわかっていながら、それに向き合ったとても強いひとたち)。
男性客を相手にする仕事をしている子、過去にしていた子も身近にいる。
映画の舞台は私の生活圏。
そのベースがあって、フィクションであってフィクションでないことは頭にあったし、これにかなり近い環境で生活している子たちに何ができるんだろう?ということは勿論考えた。
ただ、それ以上に17歳の主人公の強さにパワーをもらった。
「バービー」や「哀れなるものたち」を観終わった時の気持ちとよく似てる。
この子は、とても苦しい状況の中でどの選択をするか自分で決めて動いているし、どんなに嫌でも投げ出してはいない。
これは、一般的な平均値よりは多くの映画を観ているであろう私の感想であって多数派の感想ではおそらくない。
この映画を観たお客さんたちは、重たい気持ちで帰られる方が多いみたいで、そりゃそうだよねって思う。

京都府出身の工藤監督がこの作品を撮ったことに好感を持たない方もいるだろうし、ご本人も上映後のトークでそう仰っていた。
でも、作品にするのは個人の自由だし、内地出身の人間でなければこれは撮れなかったと思うともお話しされていた。
松山の朝キャバで働く18歳未満の女の子たちの声を何度も直接聴きに行ったエピソード、主演の花瀬琴音さんがキャバクラの体験入店をして働いたことや舞台となっている土地にしばらく住んで、役を身体に馴染ませたこと。
沖縄の貧困問題を描いてはいるものの、大変な思いをしてシングルで子どもたちを育てた監督の祖母、母を想って撮った作品であること。
ディスカッション付きの上映会があった際、誰よりも主人公の夫「マサヤ」みたいな人をなんとかしなくては!という話になったことなど、事前に知っていたことからそうでなかったエピソードまで、いろんなお話しを聴けました。

帰り道はおもいっきりロケ地。
主人公がその辺を歩いていそうな、不思議な気分になったよね。
余談ですが、リム・カーウァイ監督があの役柄でカメオ出演していたのと、ラジオの音声を皮肉な使い方をしているところがツボでした。
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