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ダイアリー・オブ・ザ・デッドのesのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

イラク戦争、ジャーナリズムへの批判などジョージ・A・ロメロ監督らしい社会批判映画。社会派という視点で観るととても見応えがある。彼が描こうとしているのは怖いゾンビではなく怖い人間なので、ゾンビにはスリルはない。個人的にはゾンビ映画は前者を楽しむものだと思っているので大いに楽しめた。

ロメロ監督の描く作品はどれもゾンビという存在を利用して人間の醜さを描いている。
混乱を打ち消そうと情報を隠蔽しようとする政府組織、制御を失った憲兵集団、白人が逃げ去った土地を支配する有色人種、娯楽でゾンビを痛ぶる人間など様々なゾンビ以外の脅威が描かれる。
「相手を人と思わなければ簡単に命を奪える」という意味合いの言葉を帰還兵である教授が放つのが印象的だった。
自殺はタブーであるクリスチャンが罪悪感から自殺する場面も、帰還兵の自殺問題を想起させる。途中で協力者として現れる聾唖者が1人生き残っていた理由も、彼が田舎町で孤立していたからなのではないかと考えると切なくなる。

恐らくロメロ監督の中には2001年9.11同時多発テロの時の情報錯綜が頭にあったとは思うが、SNSの普及による情報の錯綜についてはパンデミック下の今もよりリアルに感じられるテーマ。
一般人が即席ジャーナリストになり得る時代。主観的な情報が溢れる中、客観性を保つにはどうすれば良いのか。そこを描く為にPOV形式を採用し、監視社会の副産物である監視カメラ映像も組み込み、最終的に他者に編集させたという辺りが見事だと思う。

監督を含め、さり気ないカメオ(音声のみも含む)がチラホラあるのでそこら辺も楽しめる。
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