明石です

ダイアリー・オブ・ザ・デッドの明石ですのレビュー・感想・評価

3.0
ゾンビ映画の創始者ジョージ・ロメロ監督の新しめのゾンビ映画。撮影方法が2000年代に流行っていたPOV方式というのが本作最大の(というか唯一の)見どころ。個人的には、この一人称のモキュメンタリー形式、あんまり好きじゃない、、『ブレアウイッチプロジェクト』や『REC』のような低予算映画で成功したやり方を、巨匠ともいえるような大御所監督がわざわざ流行りに乗ってやることかなとは思う。

何よりよろしくないのが、カメラを回したがる主人公を作中の人たちが軽蔑し「こんな時にカメラ回すなんて馬鹿じゃないの?」と総スカンを食らわせ続けてること。そのおかげで流行りに乗ってるというメタ的な事実以上に作品が安っぽく見えてしまった。そもそも撮影方法がPOVになってる理由なんて、「流行ってるから」でしかないことは視聴者も重々承知してるので、そのあたりの事情(なぜ逐一カメラを回してなきゃいけない?)は穏便に済ませておくのがしきたりだと思ってたのだけど。。なんだろう、私もこの手法は軽蔑してるんだけどね、という監督のエゴが垣間見える気がして、あんまり気分が良くなかった。やるならやるでリスペクト持ってやってほしいなという思い。

「よく議論になるだろう、移住なんて認めるなとかね、国境を超えてくる連中に皆厳しい、だが今や問題は生死の境を超えて来る連中さ」という社会情勢を絡めた(ブラック)ジョークや、黒人白人の立場逆転などの人種問題を織り交ぜる感じはロメロらしいのかな。ゾンビは相変わらずノロノロとしか動かない元祖スタイル。殺人的スピードで追いかけてくるアクション系のゾンビ映画と一線引きつつ、人間同士のドロドロした愛憎劇で魅せるのはさすがでした。あと監督本人がダイナマイト好きの過激なおじいさん役でカメオ出演してて、しかも即死してたのは笑った笑。

でも総じて、今作はあんまり好きになれなかった。前作の『ランドオブザデッド』が衝撃的な面白さだっただけに、肩透かし感もひとしおでした。何にせよ流行りに乗るのは哲学を捨てるのとだいたい同じだと私は思ってる。たとえ出来が良かったとしてもね。
明石です

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