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マルナシドス -ゾンビの谷-のkuuのレビュー・感想・評価

3.5
『マルナシドス -ゾンビの谷』
原題Malnazidos/Valley of the Dead.
製作年2020年。上映時間101分。
スペイン内戦を舞台にしたハビエルルイスカルデラとアルベルトデトロが監督した2020年のスペイン産のゾンビアクション映画。

スペイン内戦中の1938年、ナチスドイツの支援を受けているフランコ政府軍のロザーノ大尉は口数の多い弁護士で、反抗的な態度が原因で軍部会議にかけられて射殺寸前のところを軍上層部にいる叔父に助けられる。
命を助けた代わりに左派の人民政府軍がいる敵地を突っ切って機密文書を運ぶミッションを押し付けられる。
収監中だった童貞野郎のデクルス二等兵を運転手にして基地を出発した二人。
道中で味方であるイタリア軍の戦闘機が墜落したのを見たので救助に行くと、パイロットは死んでいて、そこに居合わせた人民政府軍の一行に捕まる。
しかし、そのパイロットがゾンビになって襲いかかって来たため、捕虜となったまま、一行と共に逃げ出すことに。。。

今作品を見ててふと、現代の“人間を襲う”“感染して増殖する”など一般的な特徴を持つ『ゾンビ』と云う概念が1938年においてあるのかと考えた。
と云うのも、作中、人民政府軍の一人が生き返った死者を目の当たりにして『説明してくれ』呟いた言葉に対して童貞野郎のデクルス二等兵は『ゾンビだ』と述べてた。
確かに、1932年には世界初のゾンビご出演とも云える『ホワイト・ゾンビ』(主演は『魔人ドラキュラ』のベラ・ルゴシ)が公開されてる。
この頃の映画に登場するゾンビは、吸血鬼やマッドサイエンティストなどのボディガード的な召使いとして登場することがほとんどで、本来のブードゥーにおける家畜的な役割をもってる。
吸血鬼やフランケンシュタインの怪物など当時の“ホラー映画界の花形スター”に比べるとまだまだマイナーな存在に過ぎない。
もちろん主人に命令されない限り人間を襲ったりしないし、感染して増えるといった今日のゾンビ的な特徴はまだない。
我々がよく知るゾンビの登場は、ゾンビファンなら知る1960年代後半まで待たないといけない。
なのに童貞野郎は甦り死者を見て『ゾンビ』と間髪いれずに答えた。
おかしいなぁと、もう一度、巻き戻してオリジナルで聞いてみたら、『Estaba poseído.』と云ってる。
Estaba=I wasで、poseídoは鬼, 悪魔に取りつかれたような人を意味だそうだし、全くもって『ゾンビ』なる単語はでてこない。
日本語訳者は気を利かしたつもりで訳したのだろうとは思うが、そのせいでかなりの道草になった。
世紀に残るゾンビ映画ならいざ知らず。
プンプンで視聴を続けた。
とは云え十分真面目なゾンビ映画だったし(小生もゾンビと書いとるがな)、上記のセリフ意外は全くもって問題ない映画でした。
ゾンビやグロもの好き故に自然に視聴を終えた。
確かにプロットホールはあるし、ありえない状況もあるけど、そんなことを深く考えないなら軽く楽しめる作品だと思います。
今作品は、スペイン映画(つまりスペイン産)であり、プロダクションバリューは高いほうじゃないかな。
演技も悪くないし、ただ似たような人が散見されるし紛らわしかったが、カメラワークも技術的には平均以上(プロフェッショナル域)、スペインのあまり知られていない地域の素晴らしい風景、緑豊かな森、全体的に目を楽しませてくれました。
また、他のゾンビ映画と同様に、ド頭に銃弾がぶち(撃ち)込まれ、流血も見られます。
映画全体を通して、血まみれの人々や、切断された手足、そして文字通りいたるところに死がある。
しかし、今作品は個人的には妙にグロくない。
血みどろのゾンビ映画が好きで、耐性がついてる故のことやろけど、グロさは感じなかった。
あまり見慣れてない方には、いくつかのシーンでグロいと思うかもしれないけど、もし、エログロゾンビ作品を求めて今作品を見るのであれば、おそらく評価は低いんかなぁと。
とはいえ、過剰な嫌悪感を抱かせることなく、物事を面白くするのに十分な量があった。
スペイン語で冒涜的な表現が多く、人種的平等に関する問題もあるが、ヌードはない。
見落としてしまいそうな点として、最初から最後までダーク・コメディの赤い糸が張り巡らされていることが挙げられるかな。
どの例も非常に繊細で、デッドパンは云うに及ばず、ほとんどが毒舌です。
因みに『デッドパン』は、出来事の可笑しさに対して、何とも思っていない、または、何も感じていないように無表情で反応する喜劇の表現で、鈍感、皮肉、ぶっきらぼう、意図的でないものとして使われる。
スペイン語圏ではないものの、『ゾンビ』と云う日本語訳に気になってから、この点がとても気に入りました。
脚本と演技が相まって、何度か声を出して笑っえたとこもあり、この微妙なニュアンスを注目したら面白いとは思います。
このジャンルの作品としては、ものすごく新しいものでもないが、アドベンチャーホラーとして十分に楽しめました。
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