ユウ

イチケイのカラスのユウのレビュー・感想・評価

イチケイのカラス(2023年製作の映画)
3.0
ドラマ版一気見からの視聴。
ドラマ版および映画広告で前面に打ち出されていたコメディ色は序盤の掴み程度に抑えられ、全体的に重厚なストーリーが展開される本作。
正直、若干の「思ってたのと違う」という感想を抱くだろう。

だが、扱うテーマは工場都市の環境汚染とその組織的隠蔽という大きなもの。いわゆるミスリード的な演出も見られるが、「最終的に実はこうでした!」という一挙に謎が氷解する感じではなく、主人公である入間と坂間の捜査や推測によって徐々に紐解いていく形。
この緩やかな種明かしは、現実的であり、かつイチケイらしい、主人公たちと共に真相に迫る没入感をもたらした。

また、こういったドラマではお馴染みの「法の限界」すなわち、「法は正しい者の味方ではなく正しい知識を持った者の味方」というエッセンスも盛り込まれている。
しかし因果応報かもしれないが、法を悪用する人物は酷い目に合いすぎだ。
イチケイは比較的勧善懲悪的なエピソードが多いが、かの人物はちょっと割を食い過ぎである。

全体的に出来は良く、エンディングも更なる続編が出そうだし、無理に出さなくても問題はないという、理想的な塩梅で締めくくられている。

にも関わらず星を3に留めているのは、お馴染みの面々の出番がほぼないためと、冒頭の通りコメディ色が弱過ぎること。
新顔の起用に反対するわけではないが、やはりお馴染みのメンバーでの掛け合いが見たかったし、せっかく築いたコメディベースなムードをスルーしたのは残念だ。
ユウ

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