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忘れな草〜ママはあなたを抱けなかった〜のakiyoshiのレビュー・感想・評価

1.0
韓国・妊娠した若年女性のためのシェルターのドキュメンタリー。
シェルターなので、妊娠させた男性の姿はほとんど出てきません。見捨てる選択をした彼氏、子どもと女性によく会いに来て一緒に育てる選択を選ぼうとする彼氏、そもそも強姦にあってシェルターに入った女性もいて、せっかくの第三者視点のドキュメンタリーなのですから、女性側だけではなく男性側にもリーチしてほしかったところ。

職員が「犬でも自分の子は自分で育てる(ので自分の産んだ子供は妊娠に関わった男性含め自分たちで育てるべき)」というが、動物の習性と人間の習性を一緒にしてしまうのはダメです。人間の文化・社会を鑑みてとらえる必要があります。
それに、動物と十把一絡げにしても、職員が言うようにカッコウのような習性を持つ動物もいたり、子どもを見捨てたり殺したりする個体もいますし、子育てをしていた個体でも環境が変われば子を捨てることもある。千差万別です、混同しないようにしたい。

韓国・日本のように妊娠した若年女性の支援が不十分な国にあっては、自分で育てるという選択が上手くいくとは限らないと思います。実際、日本でも子育ての環境に恵まれず、追い詰められた末に子どもを殺してしまう事件も頻繁に起きています。養子の選択を揺るがせようとする職員の言動はなんとも嫌なものがあります。監督のインタビューも「母が子を育てるべき」という考え方が強かったので、同じく違和感を感じたひとは韓国の邦訳本『母親になって後悔してる』『ママにはならないことにしました 韓国で生きる子なし女性たちの悩みと幸せ』あたりをセットで読んだ方がいいと思います。
養子に出された子どもが成長して親・自分のルーツを探すこともあるし、子どもを自分で育てる選択がうまくいった人もいるでしょう。成長してみないとわからないことだってたくさんあるので、特定の方向に未成年の子を誘導させず、彼女たちがもっとゆっくり、主体的に選択肢を選べるといいな。

この映画はお勧めできませんが、父親が絶対的な決定権を持っていたり、家族がひどく世間体を気にしたり、韓国社会は日本社会とよく似ています。鏡を見るように、韓国の社会を描いた作品に触れるのはよい刺激になるかとおもいます。
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