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PS-1 黄金の河のくりふのレビュー・感想・評価

PS-1 黄金の河(2022年製作の映画)
4.0
【古色鮮明】

大ベテラン、マニ・ラトナム監督作はまだ、語れるほどには見ていない。本作は『バーフバリ』に対するタミル映画からの返答とも言われたし、その比較視点からはある程度、物申せるのかなと。

ある1作の大ヒットを受けて、国内の違う地域から別味の大作が生まれるって、娯楽映画ビジネスとしては前向きでいいよね。日本じゃあり得ないコトだし。

史実を元に50'sに書かれた原作小説は、インド(タミル)人にはお馴染みのものらしい。だからこの仕上がりも納得だけど、数多の人物とその相関図、歴史的背景を把握するのは、馴染みのない日本人にはそこそこハードルが高い。把握が済めば、実際は単純な物語なんだけど。

古色蒼然ともいえる話で、しかしフシギとオモロイ!理由の一つは、映像各ショットそのものが魅力を湛えていること。これはベテランパワーによるものか。映画の、画への力の込め方を、わかっている人が撮っているという安定感と、貫禄がある。

またVFXに頼らず、被写体そのものに頼っているのが『バーフバリ』との違いで、本作独自の魅力かと。

もう一つの柱と感じたのは、古代終わり頃の話なのに、女性が自立して大活躍していること。主要の4人が、身分の違いはあれど皆、自分の足で立ち駆け回っている。でもこれは、やはり女性が強かった『バーフバリ』の好影響もあるかと思った。

タミル映画は女性の描き方が進んでいると感じるが、南インドの女性差別が激しいことの裏返しかな?

要のヒロインは、私には久々再会のアイシュさんですが、見た出演作中、いちばん存在感があった。メイルゲイズな箱入りファム・ファタールから抜けていなかったし、CGメイクを入れた表皮の美貌で誤魔化してもいたが、本人のオーラはそれを上回る。次の2でどこまで中身が伴うか、楽しみです。

聡明姫のトリシャーさんもよかったが、セカンドヒロインであるもう一人のアイシュ…レクシュミさんがよくってね!過去何作か見ているが、日本にもこういう顔の美人いるよなあ…との親しみやすさと、ここでは濡れた肢体のブレンドがいやもうステキ!w この“海娘”は、スピンオフが見たいほどに惚れました。

スリランカを舞台の一部とすることで登場する、海辺と海戦の大見せ場が私にとってのインド映画としては珍しく、新鮮かつ惹き込まれた。

が、二部構成のつくりは『バーフバリ』の方が断然、巧い。アチラは極論、前編だけでも満足できるような、独立した物語としてオモシロサを詰め込んでいた。コチラの“つづく”は、欲求不満が湧いてしまう。

それでも、ベテラン監督による各パーツの“配膳”が巧いから、フシギと満足感の方が上回るんだけどね。

2も来月、続けての公開が決まっているので、楽しみにお付き合いしましょう。自分がまた、海外に行くタイミングとぶつかってしまったのだが、帰国するまで公開していてほしいです。w

<2024.5.14記>
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