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とべない風船の教授のレビュー・感想・評価

とべない風船(2022年製作の映画)
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映画としては生彩を欠く凡庸な作品。
西日本の豪雨災害を受けてのインスパイアが、物語に機能しているかどうかが微妙。
憲二(東出昌大)の抱える喪失感というのが演技力以上の要素としてまるで機能していない。つまり「浮いている」ということ。

加えて、凛子(三浦透子)の再就職のエピソードと、父親である繁三(小林薫)と半ば伝説化された存在である母親のさわ(原日出子)は劇中で憲二が語るように「お節介」であることと、現実的に母親としては凛子をただ惑わせ振り回しているだけのようにも感じてしまうので、正直ノイズになる。

潤(笠原秀幸)の扱いは、地味で暗めのストーリーに対して、コメディリリーフとしての役割を担わせる狙いは明らかなのだが、全体のトーンから浮き上がってしまい逆効果になってしまっている。

などなど一事が万事、ストーリーの平板さ、画面作りの平板さ故に、あまりにも抑揚のない展開が続く。
監督の狙いとしては、疲弊していく地方都市のモニュメントのようなもの、あるいはメンタルヘルスの問題を抱えた人々の回復を描きたいのだろうが、映画、あるいは作家的な視点が見当たらない。

終盤に向けて、伏線めいて配置される「黄色い風船」についても、義務的に配置され、義務的に回収されていく作為的な演出に醒めてしまう。
映画を志向しながら「映画っぽさ」を印象づける演出に終始して上手く全体が機能していないちょっと残念さが目立つ作品。
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