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正欲のタロウのレビュー・感想・評価

正欲(2023年製作の映画)
4.7
『正欲』




"観る前の自分には戻れない___"なんてたいそうなキャッチコピーついてるなと思う反面、やっぱりここに惹かれてしまったところはあって..。原作未読の上、予告編含めた事前情報からは群像劇になること以外はっきりとした話の内容は見えてこずで、その辺も「早く観たい!」と思わせるところでもあった。
いざ劇場に飛び込んでみると、客層の幅がだいぶ広かったのにまずびっくり。若いカップル、ご夫婦、1人で来てるおじさん、若い男性、女性etc..。皆さんはどこに惹かれてこの映画観に来たんですか?って聞いてまわりたくなるくらいだった。

  👀👀👀

ほんと冗談抜きで、観る前の自分には戻れなくなりました。価値観がぶっ壊される感じ。"そんな訳ない""ありえない"って言葉を使うのが怖くなるくらい、これまで色んな情報をそうやって処理してきた自分が嫌になるくらいの衝撃と世界の広さを突きつけられた。

何十億人とが暮らす世界で誰一人完璧に同じ人なんていないのはわかりきっているわけで。けれど、いざその違い(というか、誰かが自分の価値観とはかけ離れた何かを持っていること)を見せつけられた時に、どうしたってそれが理解できなくて「なんで?!」と思ってしまわざるを得ない。自分の価値観が100%正しいだなんて思ってはいないけれど、限りなくそこに近い基準で暮らしてはいるので、そことどうしたって比較をしてしまい、疑問を持ち、怖さすら感じてしまう。本作で描かれる夏月(新垣結衣)、佳道(磯村勇斗)、大也(佐藤寛太)がもつ"欲"に関しても、最後までどうしても理解はできなかった。

ただ、「そういう人がいたって何ら不思議なことではない」と口で言われる以上の説得力をもって突きつけてくるようなその内容に間違いなく、自分の心は動かされたし、紛うことなく世界の見方を変えさせられたと感じる。めちゃくちゃ良い意味で!どんな欲望を抱えていても、一人でいるのが落ち着くとは言っていても、「誰かと繋がれる場所」を心のどこかではずっと求めてるし、その場所を通して繋がれる誰かも増えていく。そんな環境が何十億って人全員にあればいいなと心の底から願わずにはいられない、とても、とっても考えさせられる映画でした。


memo
・それまで苦しくて悶々としていた雰囲気が、徐々に和らいでいくような夏月と佳道の共同生活の描写がすごい好き。部屋は別々、冷蔵庫も別々。けれどきちんと二人でご飯を食べる。セックスシーン(あえてそう言わせてもらいます)も、めっちゃくちゃ好きです。あの辺のじんわり温かい感じから急転直下で雲行き怪しくなっていくのが苦しすぎるけれど..。

・夏月との会話で啓喜(稲垣吾郎)の心が確かにグラッと揺れ動くあの感じを表現するゴローちゃんすごかった。俳優・稲垣吾郎が今後気になります。

・主題歌「呼吸のように」が気に入りすぎて、これ書いてる今もずっとかけっぱなし。Vaundyにハマりかけています。
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