三四郎

ジェラール・フィリップ 最後の冬の三四郎のレビュー・感想・評価

3.0
なんだか冒頭から…、まぁ当然のことなのだが、ジェラール・フィリップ礼賛だった笑
いや、確かに、美しい澄んだ瞳に素晴らしい演技力、まさに夭逝の名優だと思う。

ただ、1944年8月のパリ解放の際に、パリ市庁舎の奪回に協力したこと、対ナチ・レジスタンス運動へ参加していたこと、ハリウッド映画の高額なオファーを断ったこと、ブルジョワではなく一般市民に向けての演劇活動に力を入れていたことなど、「こんなに立派な人なんだぞ」と強調して見せられているようで、少々辟易した。父親が反ユダヤ主義者でフランスの右翼と手を組み、対独協力(対ナチ協力)をしていたことを払拭しようとし、故意に誇張しているようにも思えた…。
恐らく、このドキュメンタリーは演出と構成が悪い…。
亡くなる数週間前のジェラール・フィリップの話になったかと思うと、過去の成功話に戻り、また亡くなる数週間前の話になったかと思うと、過去の成功話に戻り…。その繰り返しだった。
話も少し矛盾しているように思えた。ジェラール・フィリップは出演作品を自分で選んでいたと言っていたかと思うと、妻アンヌが厳選していたというようなことも言っていた。

あの「時代」だったから仕方がないのか、あるいはフランスというお国柄故なのか、ジェラール・フィリップが共産党のシンパだったことをこのドキュメンタリーでは高く評価しているように思えた。私の勝手な思い込みだが、大体、共産主義に共感するというのは、ブルジョワ育ち故の安易な理想主義・空想主義としか思えない。

『花咲ける騎士道』の映画の説明の際に、ジェラール・フィリップはスポーツマンタイプではなかったというようなことを言っていたが、ものすごく納得してしまった。『花咲ける騎士道』の剣戟シーンがあまりに格好良くなかったから…。剣に振り回されているように見えるくらい軟弱そうだった。

酷評してしまったが、このドキュメンタリーが微妙だっただけで、ジェラール・フィリップが素晴らしい人物であったことはよくわかった。
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