今見るべき映画でした。
今年のアカデミー賞で国際長編映画賞含む9部門にノミネートされたとのことで視聴。
言わずとしれた第一次大戦、西部戦線での無意味な塹壕戦。
英雄もいない、カッコよさもない。そこにあるのはただただ死体だけ。そんな映像体験でした。
悲惨な最前線の映像と、停戦交渉の名のもとに繰り返される”上層部”とやらの贅沢な食事シーンが交互に繰り返され、前線での死がいかに軽視されているかを虚しく照らします。
同じく第一次大戦の塹壕戦をイギリス側から扱った映画「1917 命をかけた伝令」に比べ、徹底してドラマチックなシーンを廃止、救いようのない戦いを表現しているように思います。
劇中、主人公のドイツ兵パウルが突撃するシーンが三回ありました。
上官の命令にょり、塹壕を出て突撃
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走る周りで仲間の兵士がゴミのように死んでいく
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くぼみになんとか隠れる
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すぐ近くで仲間が死ぬ(死んでる)
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パウルが手榴弾を手にとって敵陣へ投げこむ
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もう一度立ち上がってもう突撃する
カット割も同様の、デジャブのように同じシーンを繰り返すことで、死ぬか生きるかは運次第であることが分かります。
停戦交渉は遅々として進まず毎日多くの血が流れますが、それでも前線に昇る朝日は美しい。ただ、朝日が作るシルエットを形作るのは、死体の数々です。
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第一次大戦から100年以上が経ったのに、未だに塹壕戦は行われています。
ロシアは西側に供与された戦車の進行を止めるために「竜の歯」と呼ばれるコンクリートの対戦車障害物を配置し、その後方に塹壕を掘っているとのことです。
参考:
ロシアの戦争は今や「防衛戦」に...ウクライナ軍を恐れて設置した「竜の歯」とは?|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/12/post-100315.php
せめてこの映画がアカデミー賞を取り、世界にもう一度、戦争の無意味さを発信してほしいと願います。