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フェイブルマンズのYACCOのレビュー・感想・評価

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)
4.0
スティーヴン・スピルバーグの自伝的映画という前情報のみで鑑賞。
主人公サミー・フェイブルマンの物語というよりは、サミーの両親とサミーの物語という印象を受けた。そして、映画を見終えた時、映画のタイトルが「The Fabelmans」であることに気づいた。

よく、人生において大切なことは全部漫画が教えてくれたと聞くけれど、サミーは人生において大切なことは全部カメラから見える世界が教えてくれたのだと思った。
幼い頃に映画に魅了されたサミー少年。
カメラとともに成長していく彼がカメラを通してみたものは、決して美しいばかりではなく、また、幸せ溢れる時だけでもなかった。
それは、時には自分が受け入れ難い事柄だったりもした。その結果、一度サミーはカメラを手放そうとするのだけれど、時を経て彼は再びカメラを手にし、それを生業とし生きていくことを選択する。

夢を叶えるといえばすごく言葉の響きはいいけれど、この映画は一方で夢を追うサミーの孤独も描く。サミーの大叔父の「芸術の世界は心を引き裂く」「家族と芸術の板挟みによって心を引き裂かれる未来が訪れる」といった予言めいた言葉がとても印象的だった。何かを作り上げようとするときには、それと向き合えば向き合うほど訪れる孤独や、己を削るような時間も無くてはならないものなのだから。
そして、それをどう世の中に出すのか。それも大きな問題だ。サミーがとった多くの瞬間のなかから、残すもの、削除するもの。何を棄てて、何を見せるのか。そして、それらが生み出すもの。

恐らくたくさんのシーンの台詞や行動、そして映像に色々なメッセージが込められていると思うのだけれど、私はどれだけ読み取れたのだろうか。
でも、映画を見た後、スピルバーグ監督のことが前よりも好きになっている自分がいた。
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