masaya

山女のmasayaのレビュー・感想・評価

山女(2022年製作の映画)
4.0
冷害による飢饉が何年も続く18世紀の東北の農村。村八分を受けている家の娘が、親の罪を被って山に入りやがて山女として畏れられる存在になる。制度化した差別と、唯一解放する神懸かり。日本の民話や伝説に現れる怪奇の類には、実はこうした出来事が下敷きになっているのかも知れない。

娘は咎人の家の出ということで村中から差別を受けるだけでなく、家庭の中で女として生まれたことによる差別も当たり前のように受け続けていた。出自と性別による差別。村でも、家でも人として遇されることなかった彼女が初めて人間らしく生きたのは、死と同義だった山に入ってからの暮らしだった。

神隠しや山姥伝説、美談とされた人柱の物語。人智を超える存在が関与した事件として語られてきたそれらが、現在にも影を落とす閉塞した社会と人間心理が原因なのかも知れないことにふと思い至らせる。これはフィクションだけど、異世界の話ではない。

新鮮な語り口だったけどこの時代にしては封建制度の気配が全く無かったな。あの辺りだと南部藩だけど侍は一度も出てこないから身分差別の話にはならないし、寺の坊主じゃなくてシャーマンの老婆、庄屋じゃなくて村長(そんちょう)が出てきてエッとなったよ。なのでこれは象徴的な話なんだなって理解した


気鋭の山田杏奈さんの主演作。彼女のチャームポイントたる健康的な丸顔のおかげであまり困窮してる感が無くて最初大丈夫か?となったのでそういう意味ではチャレンジだったのかな。健気感出てたし、演技は良かった。
masaya

masaya