夫が死んだ…腕利きのネオン職人で、人一倍ガラス管のネオンを愛した夫…
妻メイヒョンは、SARSの猛威が襲った時、工房を廃業させ、夫を転職させてしまった事を深く後悔していた…
夫の服を洗濯していた時、工房の鍵を見つけたメイヒョンは訝しがる…工房は潰したはず…
メイヒョンが工房に行くとそこには弟子のレオが居たのだ…工房を閉める事を伝えたが、レオからの答えは…
"師匠が言ってた…作りたいネオンがあるって…"
夫が作りたかったネオンを探しに街に出るメイヒョン…だが、建築法の改正により、ネオンが違法となり、今や100万ドルの夜景と言われていたあの香港の姿は無くなりつつあったのだ…
2010年に建築法が改正され、9割もネオンが撤去されている事は全く知りませんでした。
一つの時代の終わりを背景に夫婦、親子、師弟それぞれの愛情をゆったりとした時間の流れの中で情緒たっぷりに描く…思いの外イイ作品なのです。
私の中で香港といえば、ブルース・リーやジャッキー・チェンに代表されるカンフー映画だし、ジョン・ウーの漢の中の漢を描いた香港ノアール…Gメン75の香港シリーズ…とにかく"勢い"がトンデモなくあったあの頃…ところが、97年の返還以降、その勢いは失速してしまったかのようです…今でこそ、韓国やインド、台湾や中国と様々なアジア発の作品が鑑賞出来ますが、当時はゴールデンハーベスト印くらいしか日本では公開されていなかったような…
本作に映し出されたネオンが撤去された香港の夜の風景は、勢いを無くした香港の寂しさを印象付け、も〜切ない切ない…
メイヒョンとビルの過去を織り交ぜつつ、仲睦まじいだけに、ポッカリと空いてしまった心の穴を埋められないでいる妻メイヒョンの姿にじわじわと込み上げてくるモノを堪えつつ、父の葬儀でも涙を見せず、母への愛情は深いながらも何処か冷たい娘チョイホイが、あるシーンで号泣したところで、私も号泣…
こんなに泣ける映画とは思っていなかったのですが、予想以上に私の心に刺さってしまったのです…
上映館が少ないのが勿体無い…