欲求の自制/暴走というディープでインモラルなテーマを、全く包まずに生のまま提供してくる。欲望を二次元の仮想世界にて発散する危険性、思考という罪に対する拒絶という断罪の是非。超えてはいけない一線すら曖昧で、単なる二項対立に落とし込めない複雑さを宙ぶらりんのまま提示し、病的な相互依存に帰着する何とも不穏なお話だった。
まあ確かに我々の殆どは本作における怪物と形容出来るような内面、衝動を抱えている訳で、自他ともにどう向き合うべきなのか、というのに正解を見出すのは困難。セーフか否かを被害者の有無で判別し抑制し続けても、ちょっとした契機で理性は崩壊してしまう。そんな脆弱な自己において、マンティコアとしてのそれを客観視する事こそが最も大切なんでないかなあと月並みだけど思ったりしました。
まあ正直終盤までは割としっとりした恋愛ものだということもあって映画的なおもしろさはあまり感じられなかったが、主人公をカメラが掴んで離さない長回しはかなり良かったです(目のキマり具合に気づいた時超ゾッとした)。急に腹痛が来て終盤全く集中出来なかったのだけ悔しいですね
