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春に散るのmasayaのレビュー・感想・評価

春に散る(2023年製作の映画)
4.2
かつて世界を目指し諦めた老年の男と、今まさに挫折しかけていた若い男が出会い再び世界に手を伸ばす、ボクシング映画の新たな傑作!過去も未来も、家族も生活も、今この一瞬の為に全てが研ぎ澄まされていき、歓声も消えて無音に殴打音だけが響く第12Rに至福の映画体験があった。

なぜボクシングをするのか。繰り返される問いに対して、ボクシングをしている人間にしか分かり得ない、無心に近い境地がそこにあること。その瞬間は人生一つと天秤にかけられるほどのことであることの説得力が劇中の2つのタイトルマッチにあった。狂っている。だけど、納得させられてしまう。

横浜流星さん、演じるたびにその映画に独特の凄みを備えさせてしまう。この映画の主人公のようにこの一瞬の眩い輝きを放つ、今観るべき役者だ。そして佐藤浩市さん、老いて堂々とした闘士の顔と、守るべき存在の為に生まれた迷いの表情を併せ持つ複雑な役割。二人による火を吹くような演技の掛け合わせ。

大分市内(佐賀関、木上)で一部を撮影した今作、TOHOシネマズわさだで県出身の瀬々敬久監督を迎えて舞台挨拶上映。ボクシング映画を撮ろうとしたきっかけや、監督初の地元凱旋ロケを行うことになった経緯などを聞けた。フィルムコミッション大事。
司会進行がまさかの大分シネマ5・田井支配人でビックリ(大分市内で唯一春に散るを上映してない映画館です)。瀬々監督と親交があり、監督作品を以前から上映してきた田井さん。今作ではある役で出演されてるとのこと。役名で会場ざわつく。


・主人公の練習相手になった山の子ジム会長(松浦さん)がパンチの威力でミットをバンバン飛ばされてる演技というか演出がカッコ良かった。普通の素人相手にしてたら受けることのないような打撃、その素質があるのに地方の小ジムに身を預けるしかない状況、いろんなことが分からないなりに解る。

・健康な若い男女(しかも美男美女!)が一つ屋根の下で何も起きない訳がなく・・で恋愛描写皆無なのに二人いつの間にか当たり前に付き合ってて良かった。水が流れるように自然だった
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