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ほの蒼き瞳のRのネタバレレビュー・内容・結末

ほの蒼き瞳(2022年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

自宅で。

2022年のアメリカの作品。

監督は「荒野の誓い」のスコット・クーパー。

あらすじ

ウエストポイントの米陸軍士官学校で起こった陰惨な殺人事件、その捜査に乗り出した元刑事のランドー(クリスチャン・ベイル「アムステルダム」)はエドガー・アラン・ポー(ハリー・メリング「マクベス」)という名の聡明な士官候補生と共に事件の解明に挑む。

昨年、Netflixで配信されていて気になってようやく鑑賞。

お話はあらすじの通り、まぁ絵に描いたような「ミステリー」ジャンルの作品。そして主役のランドー刑事を演じるのはご存知、ノーラン版「バットマン」を演じたクリスチャン・ベイル。

監督とは過去作でFilmarksの中でも評価の高かった「荒野の誓い」でもタッグを組んでるだけあって、その魅力の引き出し方に心得があるのかもしれないんだけど、まぁとにかく彼がカッコいい!!見た目は過去に起こったにある悲しい出来事」によってガリガリに痩せ細って髭面というのもあって、見窄らしさのある老刑事って感じなんだけど、黒でシックにまとめた衣装と、やはり彼自身の「只者じゃない」雰囲気と相まって佇まいがものすごく作品としてのトーンとマッチしていたように感じる。

特に終盤、明かされる真実の中で彼が見せる「ある表情」は哀しみというよりも全てを一瞬で失ってしまった喪失感がタイトルにもある「瞳」に表れており…いやぁ改めてすごい役者さんだわ、まさに名演技。

ただ、そんなベイルよりも注目なのはあの「モルグ街の殺人」や「黒猫」「大鴉」などを世に出した稀代の推理作家エドガー・A・ポーを演じたハリー・メリング!!そう、あの「ハリー・ポッター」シリーズでハリーが居候していた意地悪なマグル一家の一人息子ダドリーを演じていた彼である!あの頃に憎たらしいぽっちゃり坊やは影も形もなく、ただそのクセのある顔立ちとギョロついた目つきだけはあの頃のままで、変人ポーを演じている。

こういう主人公に近い「若き天才」キャラクターってイケメンが配役されることも多いと思うんだけど、あえてそういう配役にはせずに、この見るからに神経質そうで、それでいて繊細にも見えるポーという人間を彼に演じさせたという点で作り手のこだわりが伺える。あと普通に今作のポーというキャラクターに合ってたしね。

彼が大人になってからの演技を見るのはこれとシャーリーズ・セロン主演の「オールド・ガード」での若社長くらいだったんだけど、他にもまだ未見だけど「バスターのバラード」や「悪魔はいつもそこに」など特にNetflix作品で多く出ているようで、Netflix的には今後も推したい俳優なのかもしれない。まぁ、なんにせよ、ベイルの相棒役でも存在感を発揮していたし、今後「化ける」可能性を持った俳優さんであることは間違いなし。

で、お話的には最初の殺人の「死体から心臓が抉り取られている」という陰惨な死体描写から第二の殺人までは割とスローなテンポで作品全体の雰囲気的にも陰鬱な展開が続くこともあり、ぶっちゃけ割と退屈。加えてラストにかけて「黒魔術」的なオカルト雰囲気も加わってきて、あれ思ったような古典的ミステリーじゃないな…と期待していた感じのものは観られないんだけど、終盤、ひとまずの一件落着で事件も収束…したかに思えた後の「どんでん返し」要素から巻き返しとばかりに引き込まれる。

で、そこの展開になってくるとランドーとポーの「バディ」としての関係性がめちゃくちゃ生きてくるんだよなぁ。特に全ての真実が明らかになった後の「あの時、あんなことが起こらなければ…」な「if」の話からもし、出会い方が違っていたら2人は「家族」になれたかもしれない…と寂しげに話すランドーとそれを悲しげに受けるポーの去り際の姿は、なんかてっきりホームズとワトソンよろしく俺が知らないだけでポーにとっての「助手役」として今後も協力関係で続いていくと思われた関係性が完全に「終わり」を迎えていることをこちら側も悟り、めちゃくちゃ切ない。

ラストもすごく悲しいラストだし、物語的には完全に悲劇で終わる作品なんだけど、うーん、なんかいい映画を観たような気もするなぁ…と最後には思わせるような作品でした。
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