竜平

自由への道の竜平のレビュー・感想・評価

自由への道(2022年製作の映画)
3.8
1861年、南北戦争下のアメリカにて南部から自由を求め北部へと逃亡することになるとある黒人男性の姿を描く。主演ウィル・スミス、監督アントワーン・フークアで贈る史実映画。

南北戦争とリンカーンによる奴隷解放宣言など、ここらへん劇中でもほんのり説明されるけど今作の鑑賞前でも後でもちょっと調べてみることで更におもしろくなるんじゃないかなと。奴隷による過酷な労働現場の様子、必死の逃亡、そして悲惨な戦争模様と、その壮絶な物語を全編モノクロというかセピア調の映像で映し出していく。例えば『それでも夜は明ける』とか『ジャンゴ 繋がれざる者』とか、奴隷制度や黒人差別の色濃い時代を扱う作品というのは所々で描写もなかなかエグいし、やっぱり重たいし、心が痛む。その中でのシリアス演技で魅せるウィル・スミスが素晴らしかったり。なのにこーゆーところであのビンタ事件がチラついてしまうのは俺だけなんかな、気にしない気にしない。で、ヒューマンドラマ推しかと思いきやそれだけでなく、サバイバル模様やちょっとしたアクションなどもありつつでじつはエンターテイメント寄りな一本。一応「実話」として描かれているけども、今作の主人公のモデルとなった人物のエピソードだったり、そもそもそれは別人だったんじゃないかとかは諸説あるらしい、ってのは余談。

とまぁ細かいところは気にせず見るとして、前述したように「見る楽しさ」がわりと強い印象。ヒューマンドラマ好きからするとその部分はもう一押し。ただ奴隷解放がアメリカ全土に広がるその前にこのような事態が起きていたなんてこと、たしかに深く考えたことなかったなと。このような歴史の「隙間」みたいなものを描いてくれる作品は貴重なんじゃないかな。そんで最後はやっぱり胸打たれ感動してしまうはず。ちょっぴり気持ちずーんとなりたい時に今作はいいかも。
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