ろく

Single8のろくのレビュー・感想・評価

Single8(2023年製作の映画)
4.0
こんなに上手くいかなかったよ。

高校のころ映画研究部に在籍していたが、文化祭で映画を撮るようになった。この映画ほど上手くいかなかったけど(最後の編集なんかぐだぐだだった)それでもひたすら「懐かしい」。この映画がズルいのは、そのころの雰囲気をとにかく郷愁として見ているものに投げかけるからだ。

それはわざとだろう。この映画はザラザラのフィルムで撮られ、僕を「あの頃」にもどしてしまう。この手の映画にもろ手を挙げて万歳してはダメなはずなのに、ああ。もうって感じで降参してしまう自分ね。これはおっさん映研ホイホイだなぁと観ていて苦笑と懐かしさの涙でぐしょぐしょである。

僕の学校は男子校なんで女子はいなかった。「俺が調達してくるよ」そうイケメンの部員が言って、そのままその女子高の子と遊んで部活にも来なくなってしまった。ふざけるなよって感じになり、いいよ、男だけで撮るからってオチ。ああ高石あかりがいたらあのころの僕らの映画も変わったものになったのだろうか(さらに苦笑)。

映研ならではの発想も楽しいし(カメラをさかさまにして撮るなんてそんな技術知らなかったぞ!)さらに最後の出来上がった映画をフルで見せてくれるのも嬉しい。僕らが映画を撮っていたのは1980年代でこの映画の時代より少しあとになるはずだけど、それでも当時のいろんなことが思い出されてくる。

そして高石あかりの可愛さね。いや高石ファンだから一寸甘目かもしれないけど、それでもこの映画を観てまず思ったのは「羨ましい」ですよ。こんな女の子いてくれたらなぁとしみじみ思う。くそ、あのイケメン男子部員め。お前がしっかり仕事していればあんな男だらけの(ちょっと間違うとLGBTの走りになる)映画なんか撮らなかったんだよって言いたくなる。

最後の上映会もこの映画と同じだったんでさらに郷愁。当時は見てくれるだけで嬉しかったんだよなぁ。意外と盛況だったのですよ。まあ半分は冷やかしだけどね。

その後大学では映画は趣味にとどめ、部活は落研に入ってしまった。そこからは「映画を作る」なんてことには一切かかわらなくなったけど、この映画を観て、また撮りたいなぁとついつい思う。あの当時はあんなに苦労していたのにね。

※もうオタクライン満載なんで、その手の「お前ら」にはヤバい映画かもしれない。でも少しでも批評的な目で観るとあらが見えてしまうかも。ただ僕は今回、そんな「あら」は見ないで純粋に楽しく見てしまった。

※この映画では撮影中にカレーショップに行くのだけど、それも僕といっしょなんで余計にふわって思ってしまった。よく神保町の「まんてん」にいったよ。ソーセージカレーばかり食べていた。まだ「まんてん」はあるらしいので久々に行きたいところ。

※最後の自主映画の紹介でまたぶわって来てしまった。そういえば僕らが撮ったあの映画のフィルムはどこに行ったのだろう。まだ学校に残っているのだろうか。それは嬉しい半分、気恥ずかしい半分である。
ろく

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