ユウ

M3GAN/ミーガンのユウのレビュー・感想・評価

M3GAN/ミーガン(2023年製作の映画)
4.3
現在のユビキタスネットワークが普及し始めた頃、具体的には今から10年ほど前だろうか。
精神病患者や嫌な出来事などの解決策を検索する人に対して、追跡広告が自殺用品をおすすめしてくるというギャグみたいなことが現実に起きていた。

本作はそういったテクノロジー黎明期のバグに焦点を当てた作品。
古典的SFである、いわゆるフランケンシュタインコンプレックスもので、怖さの質もそれである。

オモチャであり保育ロボットであるミーガンはおよそ理想的な保護者であり、かつ親に対して最大限のバックアップが行えるよう設計されている。
人間をはるかに上回る感度のセンサーを持ち、極めて高度なAIを搭載し、二重GPSにより自身の位置情報に狂いはない。
そして、微細な表情の変化から人間の心理状態を瞬時かつ的確に把握し対応する。
当然のようにネットワークへのアクセス権限も持っており、随時情報の更新、あるいは改竄、周囲のスマートデバイスのハッキングも可能。
そしてその体はチタンフレームでありながら、10代前半の少年が簡単に持ち上げられるほどに軽量。(それはおかしくない??)

SFでお馴染みのロボット三原則が論理的に絶対的でないのは既知の事実だが、ミーガンにはどうやらまったく完全に搭載されておらず、与えられた命令を遂行する上で、障害になる(なりそうな)人物には一切の容赦がない。
ただ最初のうちは比較的手段を選び、間接的な関与に留めている。
徐々にその凶行はエスカレートしていくが、あくまで保護対象のケイディの保護という命令に従い続けるため、「暴走ではなく正常動作」というSF界ではお馴染みの舞台設定である。最終盤でのみ例外的な振る舞いがあるが、これはおそらくその前の出来事による故障だろう。

PG12作品としてもグロテスクな表現はかなり控えめな部類。
この作品は、ホラーだと知らず、ただのSFだと思って鑑賞を開始すると超面白いという作品だと考える。
つまりこのレビューを見ている時点で成立しない。なんてこった!!


理想的な保護者ロボットという分野にはターミネーターという先達があるが、ミーガンもプロトコルと権限の制限さえ完璧であれば、そうなり得る資質があっただろう。
ケイディを安心させるために自身の存在意義を説きながら、David Guetta のTitanium を口ずさむシーンが印象的だった。
……多分そういう歌ではないと思うけど。
そして彼女に必要だったのはbulletproof よりwaterproof!!
ユウ

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