みんと

チョコレートな人々のみんとのレビュー・感想・評価

チョコレートな人々(2022年製作の映画)
4.5
『人生フルーツ』の東海テレビ製作ドキュメンタリー。

日本各地にショップやラボを展開する大人気チョコレート専門ブランド“久遠チョコレート”。夏目浩次さんが代表を務めるこのブランドは、商品以外にも大きな特徴がある。心や体に障がいがある人、セクシュアルマイノリティなど多様な人が働きやすく、しかもしっかりと稼げる職場作りが企業理念の中心に掲げられている。03年夏目氏が3人のスタッフと始めたパン屋を発端に19年の歩みを追っていく……。



以下、長いのでスルーしてください。


とても胸に刺さる、心に落ちるドキュメンタリーだった。素晴らしい思想と取り組みに、のめり込んで観てしまった。

チョコレートにはセロトニン効果があるのは有名な話だけど、今作では更に食材としても人を幸せにする事を教えられた。

チョコレートは優しい食材、失敗したら溶かしてまた作り直せば良い。
もがいてもがいて、それでももがいて…

単純に企業経営的に見ると、決して簡単な事では無いはずなのに、視点を変え大きな視野で捉えた時、全ての人が幸せになるカタチが見えてくる。まさに適材適所の言葉通り、出来ないならば出来るよう工夫する。その人がやり易い方法を考える。
目先の利益だけに走りがちな経営者にとっては目からウロコだと思う。

突然の発作で床を蹴るなら、吸音マットを敷けば良い。すりこぎで茶葉を粉砕し辛いなら、専用のマシーンを作れば良い。柔軟な頭で一人一人を知り個性に合わせる。
そう、やり方次第でなんとかなる。欲張らないでひとり一個ずつプロになれば良い。複雑な工程を細かく分けて実現し当たり前のようにやってのける夏目さん。

小学2年生の時、ダウン症のクラスメイトに酷いイジメをした過去を語る夏目さんは声を詰まらせ、目に涙を滲ませる。
けれど、しこりとなった出来事こそが夏目さんの原動力、そして今に繋がっているのだと思う。
更には、バリアフリー建築を学んでいた学生時代、障害者のあまりに低い賃金に驚いたと言う。1ヶ月働いて4000円の賃金、目標に掲げたのは障害の有無に関わらず最低賃金を上回る賃金を出すことだった。

上手くいかなくても良い
必要なことはもがくこと
大事なのは目標に向かってもがくこと
…ブレない想いがそこにあった。

人が生きていく中で必ずいろんな属性を持つが、それによって生き方が急にせばまるとか生きづらさ、暮らしにくさとか社会的な理不尽を受けるのはナンセンス。
凸凹をどう組み合わせるか、そう言う社会でなければならない。

決して無理はしない、無理をさせることもしない、みんなの時間軸で大事に大事に一つ一つ1歩1歩みんなで成長してもがいて行けたらいい。

表面的なところだけで物を見たり判断する事への怒りにはかなりの熱が入ってた。

無理だとか排除するのは簡単、どうしたら受け入れていけるかを考えるのは難しいけれど、そこにチャレンジしていくから成長がある。

言っても綺麗事でしょ、障害者雇用を一般の人がするのはなかなか難しいでしょ、とまだまだ、言われたり見られたりする。
経済人の殆どは、素晴らしいね、頑張ってるね、大変だねとも言ってくれる。けれど、かけてくれる言葉はやっぱり他人事。一部の人が周りから大変だねと言われて頑張ることじゃなく、みんなが自分事として捉えなければ。なにも福祉だけの事ではなく、10年15年20年先に障がいがあるから働けないなんて昔の話だね、障害が重たいから数千円で働いてたとか昔の話だね、と言えるようになりたい。

日本中の、世界中のみんなが青空の下でうわぁ~!っと声を出して笑顔、笑顔、笑顔、そうなれる透き通った社会になれるようにしたいと思うし…。
見ててください絶対やります!

力強く、そう締めくくられる。


もがいてもがいて、それでももがいて夏目さんが実現したい透き通った社会。
微力ながら、せめて彼らが作った“久遠チョコレート”を食べる事で応援したいと思う。
みんと

みんと