荒野の狼

家と世界の荒野の狼のレビュー・感想・評価

家と世界(1984年製作の映画)
5.0
インド女性の開放を一つの焦点とし、1905年のベンガル分割に伴う、スワデーシー(Swadeshi国産品愛用・外国製品不買運動)とイスラムとヒンズー教の対立を背景とした140分のカラー映画。原作はガンジーが登場する以前の1915年に書かれ、ヘルマン・ヘッセやイェーツにも評価されたラビーンドラナート・タゴールの”家と世界 Ghare Baire(ベンガル語)The Home and the World”。サタジット・レイ監督でベンガル語。
外の世界を全く知らずに10年間の結婚生活の送った後、領主の夫に英語教育や外出などの自由を与えられた妻 Swatilekha Chatterjee が主演。タゴール自身を思わせる夫 Nikhil(自由の意味)をビクター・バナージーVictor Banerjee が好演。バナージーは、無理強いして、妻を家庭に縛り付けるのは、本当の愛ではないとして、自分以外の男性との交流を推奨し、親友のショウミットロ・チャタージ Soumitra Chatterjee(レイ監督作品常連)を紹介する。チャタージは、政治的にスワデーシーを繰り広げ、妻にも接近していく。
基本的にはインドを愛するこれらの人物や、インドで協調してきた二つの宗教イスラムとヒンズーが、イギリスの政略の背景にあって、対立していく。後のインドとパキスタンの分裂や宗教間の対立を考えると現代にも続く問題といえる。タゴール自身が、当初は深く推奨し、後には放棄したスワデーシーの負の側面(外国製品の売買に頼る貧しいイスラム教徒には受け入れられない)も描かれ、何故、タゴールがガンジーと対立したのかという理由も伺える。
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