peripateticS

シモーヌ フランスに最も愛された政治家のperipateticSのレビュー・感想・評価

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壮大な物語だったが、彼女がショアー以降を自己否定や矛盾を抱きながら生きていかざるをえなかったことや、葛藤や不安定を、こちらが想像しながら観られる構成になっていた。
忘れたいけれど忘れるわけにいかない、サバイバーと言われることの罪悪感と被害者感情、語ることと語らないことの加害性、解釈の暴力性、または忘れ去ろうとすることの暴力性。

こうした複雑な精神状態と記憶の中を生きた人にとっては、自分がいち為政者となることですら懐疑的に思うこともあったかもしれない

何層にもなる自己矛盾と葛藤の経験を持つ人の多くは、自分が発した言葉を、幾重にも反芻し、ある時はブーメランのように自分を傷つけ、その潜在的可能性ですら予感しながら発話している。そうした状況にありながら、それでもなお沈黙を破る人たちの言葉に、私たちはどれほど想像力を働かせられるのか。敬意と労りの気持ちを改めながら、継承することの難しさ。
歴史学を齧り始めた頃によく感じていた、目が眩むような感覚とか、食いしばる決意や固い思いやりなど、がさっと浮かんできた。いつも忘れないでいたい

歴史と記憶は別の存在、でもどちらも無碍にはできないし、そんなに簡単に割り切れるものじゃない
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