YasujiOshiba

ウィッチスターズ 流星からの寄生体XのYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

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N座の3。23-100。イタリア三昧のラスト。これは楽しかった。これもゲイカルチャーが登場。結局3つの時代を通して、ある種の偏見の推移をみたって感じ。

ハロウインの夜に夜空を不気味に飛び交うホウキ星のエフェクトが、いかにも手作り、チープでカラフルで楽しい。その流れ星とともに地球に落ちてきた寄生体がやらかしてくれるってのは、そのままカーペンターなんだけど、この寄生体が安っぽいのに怖くて、怖いのに笑ってしまう。でも良い子には見せちゃダメ。

だって、この笑うしなかない寄生体の寄生の仕方がエロくてグロくてしかもカラフルでパンク。相手に噛みつき/抱きつきドロドロの液体ぶちまけると相手に憑依・寄生・感染するのだけど、感染も寄生も憑依もようするに生殖のことだろってスタンス。悪くない。

冒頭で「お金がないやつは映画なんか撮っちゃダメ」というセリフがあるけど、これは逆説的な決意表明。ここでやろうとしているのはまさに「金はないけど映画は撮るぜ」みたいなことだからね。

冒頭は、よくある若いお馬鹿さんたちの同窓会。人里離れたお屋敷風のボロい隠れ家に、娼婦を呼んでドラッグパーティやろうぜという。ところがドラッグを持ってくるはずのヤツが感染していたという話。

ともかくもみんなそろったからと娼婦たちが登場。みんなかっこいい。中でもとりわけ目立っているのがステッラ(Giulia Zeetti)。ちょいとお鼻がたかいけれど、そこがいかにもホウキに乗った魔女風でよい。しかも、どんどんカッコよくなってゆくのよね。

ちょいとググると、彼女は歌も歌うのね。はりつけておきますわ:
https://www.youtube.com/watch?v=pFAnxJNLU4M

そこに元カノがゲイの弟と、もうひとりの敬虔なクリスチャン(!)のガールフレンド(とうぜん黒縁メガネ!)とかかがなんかを連れて乗り込んでくる。みんながやってきたところで、感染したパンク男が発作を起こし、寄生体ゾンビとなおそいかかる。そとからも寄生体に感染した植物なんかがおそいかかってくる。みんなで迷路のような隠れ家/古城を逃げ回るジェットコースタームービーなんだけど、それだけじゃない。

ラジオからは『アメリカン・グラフィーティ』(1973)のウルフマン・ジャックが禿げてパンクになったようなDJが、シンデレロ(シンデレラの男性形)なんてラッパーを呼んで、世の中の破滅的な状況をパンクなラップで語るのだけど、ハロウィンの夜にその世の中のほうは寄生体によってどんどん破滅しているというわけだ。

これってカーペンターズ流の「世界の終わり」なんだよね。この世界の終わりに、この監督はエウタナシアの問題を忍び込ませるところがよい。話のなかに挟み込まれるフラッシュバックが次第に解き明かしてくれるのが、エルネスト(Guglielmo Favila)とサムエル(Raffaele Ottolenghi
)の過去。ふたりが同時に愛したジュリアがALSと思われる病に侵され、死に水を与えるのが誰かという話。

その思い出に決着をつけるラストシーンは、シノさんが言うように、『遊星からの物体X』(1982)のラストで残された男2人が世界の終わりを眺めるシーンと重なりながら、それを乗り越えてゆく。世界の終わりのあとで、まるで日本のヒーロー漫画のように、生まれ変わった星/ステッラが走り出せば、日本語で「つづく」と表示されるのだから。

っと、メガネの敬虔カトリックちゃんのサラも忘れられない。フェデリカ・ベルトラーニが演じて強烈な印象を残すのだけど、マジンガーZをこえるブレストファイアーをぶちかますのよね。しかも、来るぞ来るぞというところで来る。みごと。拍手!

その彼女と撮った短編がYTにあった。「A Short Film Directed by Federico Sfascia NEW YORK FILM ACADEMY STUDENT PROJECT」と題されているけれど、なるほどフェデリコ・スファッシャという監督は演出が好きなのねというのがよくわかる。これね:

https://www.youtube.com/watch?v=_fK4ZK8xDSs

そうそう、このフェデリコ・ファッシャという監督さん、シルヴェスタ・スタローンをリスペクトしてるんだね。この短編にも出てくるのだけど、エンドクレジットの謝辞に「スタローンの言うことって、けっこういかしているぜ」みたいなのがあったはず。

追記:
YouTube でメーキング発見。楽しそうだ。
https://www.youtube.com/watch?v=P9TA_Xe-qM0
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