東京国際映画祭クロージング作品。
噴飯ものである。ゴジラが出る場面は面白い。ゴジラの登場場面は「キングコング」以来の怪獣は南の島から登場するという嬉しい入り方だ。海を東京湾目指して進むゴジラを機雷船で阻止しようとする場面は「ジョーズ」だ。ゴジラは部分で見せた方が恐ろしい。「ジョーズ」と同じだ。海面から背びれが突き立ち、あるいは顔の上半分だけが迫ってくる恐怖。この場面は素晴らしい。ゴジラが東京に上陸しても煙を使って、あからさまにはゴジラの容姿を見せないのも上手い。しかし後半にゴジラが陸上を歩きながら無防備に全身をさらしてしまうと一気に緊張感が醒めてしまうのだ。だから決戦を再び海に戻したのもすこぶる正しい。問題なのはゴジラ以外のドラマ部分だ。神木隆之介は特攻を回避して、悩み、死に場所を探している男だ。「永遠の０」と全く同じだ。山崎貴は何をやりたかったのか？ゴジラを見たいのに後半は特攻の話にどんどんすり替わっていく。神木隆之介が神風特攻隊として自爆してゴジラを倒そうと煽っていく。クライマックスは音楽を止めて、画面はスローモーションにして抒情感を押し付けていく。結果はもはや問題ではない。特攻を物語に利用して追い詰めていく山崎貴の映画に対する姿勢が醜悪なのだ。本作は「戦争をどう乗り越えて再出発するか」というテーマを込めているのだが、山崎貴自身が「戦争」を真摯に受け止めて格闘していない。センチメンタルに陳腐にまとめようとする、たかを括った姿勢は映画への冒涜である。
浜辺美波、安藤サクラが全然活かされていないのも残念だ。浜辺がゴジラに列車ごと宙吊りにされる場面で「キングコング」を妄想したのだが。せめてゴジラと浜辺の視線を交わして欲しかった。
