らんら

ゴジラ-1.0のらんらのネタバレレビュー・内容・結末

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

山崎貴監督の映画は、個人的に作品によって好き嫌いの差が激しくて、「DESTINY鎌倉ものがたり」やCGアニメ作品などのファンタジー寄りのものは全く好みでは無いのですが、「アルキメデスの大戦」や「永遠の0」などの戦争映画は凄く好きで、今回の作品は予告映像を観た感じ、後者の作風だろうなと確信して期待いっぱいで観に行きました。

結果的に満足度の高い作品で、とても楽しめました。

兎に角、ゴジラの描写と終盤の戦闘シーンがめちゃくちゃ良いです。ロマンに溢れていて、かっこよ過ぎて震えました。
戦闘機「震電」があまりにかっこよくて涙が出ました。この終盤のシーンが良すぎるが故に他の粗とか引っかかる部分が気にならなくなります。というか忘れさせられます。
音楽も凄く良くて、ここでメインテーマがかかって欲しい!というところでしっかり流れるので熱いです。

いい意味でも悪い意味でも、「期待通りの作品」という感じでした。鑑賞者が観たい演出やタイミングを分かっていて、期待を裏切りません。言い方を変えれば、先の展開が予想出来てしまう映画です。全然裏切りません。
それはそれで気持ちがいいので良いのかもしれませんがストーリーに新鮮さはありませんでした。全体的に綺麗にまとまりすぎているなって思います。

特にそれが顕著だったのが人間ドラマのパートです。基本的に毎回、山崎監督の描く人間ドラマはお涙頂戴でくさい部分があるのですが今回はあまりにテンプレすぎて、流石に泣けませんでした。新鮮味に欠けてる気がします。

血の繋がっていない「擬似家族」なんてもう他の作品でやり尽くされてますし、その描写も演出も相変わらずどこかで見たようなありきたりなものでした。


主人公の設定は凄く好きです。特攻から逃げ、大戸島でも生き残ってしまい負い目を感じている主人公が、今度こそ「自分の戦争」を終わらせる為にゴジラに立ち向かう。
実戦で使われることのなかった戦闘機「震電」と主人公の境遇を重ねているところも素晴らしいです。
どちらも実力はあるのに本来の役目を果たせず、終わらない戦争の中に存在している。
とても熱い設定だなと思いました。

神木隆之介の演技も凄くいいです。例の「絶叫シーン」ですが私はめちゃくちゃ心が震えました。

終盤、敷島が震電に乗ってゴジラの方へ向かうシーンで、下に広がる農村と家々を一瞥する描写がありましたがとてもグッときました。その時の敷島の眼差しで「敷島は生きて家に帰ろうとしている」ということが伝わり、素敵な表現だなと思いました


そしてやはり安藤サクラが良い味を出してます…彼女がいるだけで作品の質が上がるというか、リアリティが一気に引き上がるなって改めて感じました

時代設定も凄くいいです。もっと絶望感が欲しいところですが、太平洋戦争開戦を伝えるラジオ放送と同じメロディが、ゴジラ上陸によって再び流れる演出にゾワッとしました。あのメロディの絶望感は凄まじいです。

佐々木蔵之介の演じる「秋津」というキャラクターは口調といい台詞回しといい、正直作り物感があって少し冷めました。
戦争を経験したことのない水島が共に戦いたいと言うのを止めて颯爽と前に進むシーン、あのとき水島を背に秋津が言った「未来はお前に託した〰️」的なセリフはなんかちょっと…直接的すぎて無粋な感じがしました。
1人だけ漫画みたいなキャラで浮いてます。

そして何より、ラストの浜辺美波が綺麗すぎて違和感…
爆風に巻き込まれて建物の破片やガラスと一緒になって吹き飛ばされたのに、数ヶ月後には片目と片腕だけ包帯が巻かれていて、そこ以外は切り傷や打撲痕も残っていない…不自然すぎるし、なんかあっさりしすぎていて、あの敷島の号哭が軽くなってしまいます。

原型が分からなくなる程、とは言いませんが片目以外は目も当てられない状態くらいにした方が、儚いと思っていた人間の生命力の強さを感じさせてグッときたのになぁと思います。G細胞の再生能力を匂わせてるというのは分かるんですけど…

ジャンルが違うのであまり比較対象にはなりませんが、このゴジラは「シン・ゴジラ」程の絶望感はないし「シン・ゴジラ」程の中毒性はないです。でも全体としては楽しめる良い作品でした。
匂わせた最後なのもよかったです
らんら

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