強い

ワイルドキャットの強いのレビュー・感想・評価

ワイルドキャット(2022年製作の映画)
3.9
戦争帰還兵でPTSDを発症したハリーとはぐれオポッサムの子のアマゾン保護ドキュメンタリー。

保護動物の成長のドキュメンタリーかと思いきや、ハリーの成長のドキュメンタリーである。
動物達を支える仕事をしている筈のハリーだが、実際は事あるごとに不安定になるハリーを支えているのはヤマネコ。
違法な猟や伐採、自然であるが故の驚異に曝されながらパートナーのサムとヤマネコ達の存在に生かされているのはハリーの方だった。

「彼は助けを求めないことで、君に心の傷を負わせている」と言われてしまうが、その通りで、何か自分の存在を肯定してくれる環境に全ベットしてしまうハリーは見ていて痛々しく、危うい。
カーンを亡くした傷の癒えぬままキアヌを独り立ちさせるために突き放そうとするシーンは、まるで離脱症状のようで、野生に返すという大義名分の元、ハリー自身が依存から脱出するために踠いているようにも見えた。

「悲しいけれど正しいことをした」と、きっと過去に救えなかった沢山の命や自分がそれを成し遂げる迄に受けた傷のこと、本当ならばずっと側にいたい“自分を必要としている存在”を想っているのであろう涙が、美しかった。

どうか彼の未来が明るいものでありますように。そしてキアヌが元気に駆け回っていますように。
強い

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