すずや

怪物のすずやのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
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誰かを"怪物"扱いするものこそが"怪物"である、そう解釈したかったけれど、まずどうにもクィア当事者が負ってきた「お前は怪物だ」っていうスティグマが頭をよぎる。そう、何度も何度も聞いてきた言葉で、自分は怪物だ、この世界は自分を受け入れない、そんな思いはずっとずっと幼い頃からあったな、という自分の経験が蘇った。みなとくんの経験に近しいものが自分にもある、って感じさせられて…
純然たるクィアの少年の物語で、クィアパルムもそうだろうと思う。どうしてそこまで頑なに宣伝もクィアパルムを必死に隠すのか…と思っていたけれど、観て尚そのことには怒りが増した。
1幕で"お願いだから普通でいてくれ"と願うお母さんの呪いを描き、2幕で"男らしくいなければ"という先生の呪いを描いて、1,2幕で輪郭を作り上げたみなとのクィアアイデンティティを主題に3幕を描く。この構成は素直にめちゃくちゃ上手いなと思った。1幕のマイクロアグレッションめちゃくちゃ怖かったし、お母さんに自覚がない感じがなおリアルだなと思った。1,2幕は3幕に向けたヒント提示だったのかな、って思うと、もっとそこの物語まで引っ張る感がないとよかったな…とは思ってしまうけど、3幕のみなとくんを見ているとなんだか笑顔にもなれて不思議な感じだった。
この世界は私らを怪物と呼ぶけれど、それでもこの世界を生きなくちゃならないのは本当に残酷。もう大人になってしまった自分のようなクィアの人間にできるのは、みなとくんのような存在を孤独に陥らせないことでしかないとしみじみ…
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