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君たちはどう生きるかのTwinYorksのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

公開初日に劇場へ映画を観に行くという体験は今回がはじめてだった。さすがにハヤオの年齢的にこれが最後になりそうな気がしたので、この「事前宣伝一切なし」の術中にあえてハマってみた。
平日の昼、Dolby Atmos(200円の追加料金)、客の入りは9割くらい? でも、予告編が流れている間中、(いよいよ来るぞ・・)という静かな興奮を劇場の皆で共有している感じがした。
さて、本作。観終わって何か大きな感動があったかというと、実はそうでもない。なんだかよくわからんし、唐突に終わってしまうし。
だからストーリーの面白さで引っ張っていくというよりは、ハヤオの心象風景やコンプレックス、イマジネーションを物語にとりあえず乗せた、という感じだろうか。
ゆえに、というべきか、物語はファンタジーの部分が終わると同時に、驚くほどあっさり閉幕してしまう。「もう言いたいこと終わったからバイバーイ」みたいな感じで。
ラピュタ、もののけ姫、千と千尋、風立ちぬ、色々な過去作の要素が入っていて、まぁ「集大成」といえばそうかもしれないけど、イマジネーションの限界点(臨界点というべきか)を見た気もした。もちろん、その限界値は今もなお日本の映像クリエイターの中では最高級のものだとは思う。村上春樹の『街とその不確かな壁』が出たときの印象と近いものがあるかも。非常に高い技術水準で過去の自分のモチーフを繰り返してしまうと、過去に自分が作り出したものが世に浸透しすぎているせいで、むしろ既視感と捉えられてしまう皮肉。
そしてほぼ余談ながら、エンディングが米津玄師っていうのは正直ちょっと萎えた。なんというか、時流に乗らないところがジブリの良さだと思っていたから。アニメの演出も(特に炎まわりの描写)ところどころMAPPAやUfotable的なCGライクなルックが見られて、宮崎駿らしからぬ感じもあり、今風な部分がまったくないかと言われるとそうでもない。扉というモチーフや青サギが登場する場面の効果音の使い方は妙なことに新海誠にも通じているし、物語も見ようによっては流行りのマルチバースともいえる。
でもそれがイマジネーションの跳躍とまで評価できるかと言われると難しい。部分的にそう言える要素があったとしても、全体として見ればあくまでハヤオ個人の、そして孤高のアニメーターとしての『精算』なんだろうと思うほかない作品だった。

ーーうろ覚え粗筋ーー
東京大空襲の戦火で亡くした母の記憶が焼き付いて離れない眞人。
軍事産業の有力者らしい父と一時的に東京を離れ疎開する。父が連れていた後妻の夏子は美しく、亡き母とそっくりだった。疎開先の屋敷に到着すると、7人の奇怪な老婆たちが父の土産に群がっている。
眞人は転校先でいじめに遭い、自分のこめかみに自分で石をぶつけて傷を付ける。父母は心配するが、眞人はコケただけと言う。母は眞人に一冊の本を遺していた。吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』。そんな眞人の元に不気味な青サギが現れ、眞人を挑発する。
屋敷の近くに、謎の塔がある。そこで書物を読みすぎておかしくなったという大叔父の存在を知らされる。
ある日、身ごもっていた夏子はつわりで体調を崩し療養していたが、姿を消してしまう。
青サギの中身は鼻の大きな醜い小男で、「お前の母親は生きている」との言葉に誘われ眞人は老婆のひとりであるキリコと塔の中へ。当初、眞人は青サギを弓矢で殺そうとするなど敵対していたが、次第に仲間のような関係になっていく。
塔の中には別世界が広がっており、若い頃の姿のキリコが、幻の帆船が無数に浮かぶ海の世界で暮らしている。
この世界に大量に棲むワラワラは、体を風船のように膨らませ、「上の世界」へ昇って人間に子宝を授ける。しかしそれを邪魔するペリカンたち。そんなペリカンを、火を司る少女ヒミが炎で燃やして、辛うじて残ったワラワラだけが生命になる。ヒミは、眞人の母の若い頃の姿である。ヒミと眞人は心を通わせる。
塔の中の異世界で大叔父は、積み木をすることで世界のバランスを取っている。それをニワトリ?の大王が壊し、塔の中の世界は崩壊する。大叔父は眞人に、争いのない世界を作れとの言葉を遺す。
かろうじて眞人は夏子を救出し、現実の世界への扉を開けて戻ってくる。別の扉を開けたヒミとはそこで別れとなった。
青サギは「じゃあな、友達」と言って姿を消す。
戦争は終わり、眞人はまた東京へ戻る。
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