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君たちはどう生きるかのmasayaのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.5
凄かった・・期待遥かに先を行った傑作。何も情報ない状態からの、どこへ連れて行かれるか、どこまで連れて行かれるかの飛距離の遠さに震えた。そこには混じりっけなしの混沌という訳の分からないものがあり、他に類型はなくただただ神話的だった。

うまく言えないけども、今までの作品で見せられたジブリ的表現はこういう場面の為に用意されてきたのかと思う所が幾つもあった。明示されてないいくつもの答え合わせがあった。アニメーションによる呪いと祝福に溢れていた。
タイトルからして御大から説教されると思ってしおしお劇場に行ったら血湧き肉躍る幻想冒険譚でギャップで風邪を引くやつだった。声優もどれが誰なのかいまだに分かってない。

作画協力が見たことないほどオールジャパンだった。それにしても、忖度のない抜き身の宮﨑駿がここにあるのだとしたら、監督の作風を継承していくのはジブリでもカラーでも4℃でもなくポノックなのかなあ。ポノック早くヒット出してほしいね。

公開直前のポスタービジュアル大喜利、ネット民の悪ノリかと思ったらそうそう的外れでも無かったのが笑える。アオサギはどう生きるか。

7/22 2度目の鑑賞。
ディティール多めのアニメーションは2度目が一番面白い。改めて観るとストーリーはごく王道シンプルで、それでいてこれだけ独創的に仕上げてくるのはやはり特別感ある。忘れられないカットが一つあるだけで名画だし、それが幾度と無く押し寄せてくる多幸感がすごい。

構造がシンプルで余白があり過ぎるほどあるがゆえに、ちょっとした引っかかりで自分にとっての大事な作品と重なる。銀河鉄道の夜であり、アリスであり、千と千尋をはじめジブリの過去作であり。観客一人一人が出会い、離れ、現実の生で普段は忘れていても根底に残り続ける物語についての物語。

2024/1/8 3度目の鑑賞
かなり空けての再鑑賞は、大きな賞の受賞を受けて沢山のお客さんと共に。この愛すべき歪で荒々しい想像の世界を、大勢の人と共に旅する嬉しさがあった。木と石、それから火。人が自然界から道具たるものを手に入れた太古から綿々と続く、選択についての物語。

木の道具と石(鉄)の道具の対比が意図されている、という論評を何処かで見たからか、誰か何を持ってるかがずっと気になって観てた。父親は日本刀(鉄)を、眞人は弓矢(木と鉄)を、夏子は鏑矢(木)を持つ。どれも傷付ける為であり守る為である武器の違いに何か意味がありそうだ。

王が帯剣し民が包丁やナイフを振るインコ王国は、切れ味が鋭く、重く、硬い石によって力を蓄えた全体主義の象徴だった。木製の積み木を模して作られた石の積み木が司る世界、その悪意によっていつの間にか姿を変えているまやかしの調和。
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