森見登美彦が熱帯でやろうとして出来なかった円環性やメタ性、二重性を煮詰まらずに提示すると、これになるんかなという奇妙なデジャヴがあった。まぁ、物語という点ではこれも煮詰まってはいるが。
個人的には、イノセントな少年と少年の動機を支える母であり且つ生娘でもある少女という構図が今回も見れて良かったなと思いつつ、他方で世界の方がマクガフィンする話は正直好みではなかった。恐らく僕は宮崎駿を新海誠たちとは違って世界を描く人だと仮託し、セカイ系とは異なる受容体験をしたかったに違いない。この点に関して、少し残念だった。
とはいえ、主人公が地獄/虚構の世界を経て現実を受け入れ、アオサギを友に持つという「成熟と喪失」の物語を観れたのは面白かった。
読み物としては面白いが留保が決してないわけではない作家主義的な評論をほどほどに見つつ、他の鑑賞者の感想を読み漁りたい。