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君たちはどう生きるかの和のネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

難しい映画だった。千と千尋やハウルなんかは、これよりももっとファンタジー性が強い映画だと思うがそれよりもっともっと難しかった。

ストーリーが進むと火事で亡くなってしまった母は「ヒミ」として、大叔父が創造した死の世界で火を使う魔法使いになっていた。これがこの作品における死生観なのだと思った。
「死」は苦しかったりいつまでも悲しむものではなくて、その人は死者の世界に行ってしまっただけでいつかまたこっちに戻ってくる。どこかでその人は生き続ける。母の死から離れられなかった眞人にとっては救いのような解釈。そんな輪廻転生にファンタジーを加えたような死生観は、ジブリらしいなと感じた。

母親を亡くし父親も義母に奪われ、新しい学校で友達もできない眞人。夫には姉の面影を重ねられて、継子には認められない夏子。
いずれも「孤独」を感じていた2人が、創作の世界にのめり込み「孤独」になった大叔父が創った世界へ誘われる。

眞人も夏子も作品の中で他者からの呼び名が定まらない。「眞人さん」「若旦那」「旦那」、「お嬢さん」「奥さま」「夏子おばさん」。わざとらしく呼び名が変わるのは、周りの人間にとって2人の存在がそこまで大きくないことを隠喩している気がした。
しかし、死の世界で眞人は青鷺やキリコ、ヒミという仲間を見つけ、夏子は眞人に母親と認めてもらえた。

「人は誰かに生かされながら生きている」
これはどの作品においても宮﨑駿が大切にしているテーマだと思う。今回の作品においてもそれは例外ではない。
「(沢山の人の死と生が積み重なって成り立っているこの世界で)君たちはどう生きるか」
誰もが孤独では生きられない世界で、どうやって自分の生を全うするのか。この映画は、原作でも問われているこの問いに対する宮﨑駿的回答を示しているんじゃないかと思う。
 
創作に取り憑かれた孤独な天才、宮﨑駿が創った「ジブリの世界」は平穏だといいなと思う。
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