デニロ

鹿島灘の女のデニロのレビュー・感想・評価

鹿島灘の女(1959年製作の映画)
3.5
1959年製作公開作品。鹿島の漁村から水郷地区の早場米の刈入れに出向く若者たちを中心にドラマを組み立てる。水郷を使っての農作業への行き来で溜口冗談の花を咲かせる場面が素晴らしい。

この時代を描く作品を最近よく観るのだが何か釈然としない。東京を舞台にすると物凄くハイカラな生活をしていて、女性はオシャレを満喫していて、男はバー等に出掛けて楽しんでいる。嘘だろ、と思う。わたしの暮らしていた町はそんなにキラキラしていなかったぞ、というより土埃の中で生きていたという記憶しかない。本作を観てこれだよ、これが日本だわたしの国だ、と思う。

連続テレビ小説「ひよっこ」は茨城の農家の娘が東京に行って、という話だったけど、農家の描写に違うよなと思ったものです。のどかなのはその通りなのだが、生活と同じくらいにこころも貧しいのですよ。で東京に出ていくと東京オリンピック需要で大忙しの都会生活篇になる。都会と地方の格差は凄まじいものだということだろうか。とはいえ本作では、東京から失業中のおじさんたちが大勢水郷に出稼ぎに来ていたっけ。

若い男女の行き違い思い違いがサイドストーリー。ラストの連絡船に乗る女とマグロ船に乗る男のすれ違いはそのまま女の思い違いを描いていて残酷だ。屈託なく大声で男を呼ぶ女。マグロ船に乗り得意な男は気づかない。広々と開放的な海故に人々の思いはもはや交わることはない。

「俳優が監督するとき」シネマヴェーラ渋谷での一篇。八木保太郎脚本、山村聰監督作品。
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