ぶみ

アイスクリームフィーバーのぶみのレビュー・感想・評価

アイスクリームフィーバー(2023年製作の映画)
4.0
「100万年君を愛ス」

川上未映子が上梓した短編集『愛の夢とか』に収録されている『アイスクリーム熱』を、千原徹也監督、吉岡里帆主演により映像化した群像劇。
主人公がアルバイトしているアイスクリーム屋を中心として、四人の女性の姿を中心に描く。
原作は未読。
主人公となるアイスクリーム屋のアルバイト・常田菜摘を吉岡、その常連客・橋本佐保をモトーラ世里奈、菜摘の後輩のアルバイト・桑島貴子を「水曜日のカンパネラ」のボーカル・詩羽、アイスクリーム屋の近所にある銭湯に通う女性・高嶋優を松本まりかが演じているほか、南琴奈、後藤淳平(ジャルジャル)、はっとり(マカロニえんぴつ)、MEGUMI、コムアイ、片桐はいり、安達祐実等が登場。
物語は、一応吉岡演じる菜摘が主人公とはなっているものの、そこまでスポットが当てられているわけではなく、様々な物語が並行して進行していくため、群像劇の装いが強い。
何より、正方形に近く、角が丸められた画面サイズを筆頭に、凝った場面切り替えやカメラワーク等、アートディレクターやグラフィックデザイナーを本業とする監督らしく、映画というよりも、MVか長編CMかのような映像表現が特徴的であり、そこを受け入れられるかどうかがポイントの一つ。
また、菜摘、佐保、貴子、優に加え、家を出て行った父親を捜すため、上京してきた南演じる高校生・美和の物語が、重なるのか重ならないのか常に微妙な距離感であり、それぞれ不思議な魅力を放っている。
色々な意味で、ビジュアルが強く、ややもすると敬遠されがちなテイストではあるが、1998年に小沢健二が発表した『春にして君を想う』がエンドロールで流れるように、現代の物語でありながら、その画面サイズから、まだアナログとデジタルが入り混じっていた90年代の雰囲気がそこはかとなく感じられるとともに、思わずアイスクリームを食べたくなるような都会の夏の物語に酔いしれることができる良作。

話が急角度すぎて、アレなんですけど。
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