horahuki

ファンタズムのhorahukiのレビュー・感想・評価

ファンタズム(1979年製作の映画)
4.3
すっごく面白かった!!
視覚的に私の好みにどハマり。
こんな凄まじい作品を監督・脚本・撮影等ほとんどひとりでやり遂げたドンコスカレリ監督はマジもんの天才だと思います。

今回が初見だと思ってたんですが、見たことありました。いつ見たんだろ…全く思い出せない…。それにしてもアメリカ映画なのに、端々からどことなくイタリア映画っぽい雰囲気を感じるんですよね。本当になんとなくなんですけど…なんでかな。

とにかく映像の魅力に溢れた作品で、冒頭の殺害シーンからコスカレリ監督の非凡な演出力が冴え渡っている。暗闇の中、墓場というシチュエーションで一戦交えてる男女。美女のおっぱいと暗闇に光り輝く銀色のナイフという、こちらの視覚にまで突き刺さってくるような強烈なイメージ。ズームイン→カットにより顔がトールマンへと切り替わるちょいダサ演出も逆にカッコイイ。

霊廟の白を基調とした無機質な内装デザインが重々しい空気感を醸成し、「何かが起こるのでは…」という吸い込まれそうなほどに強烈な感覚に襲われる。そこに現れる黒い影とトールマン。両者とも事前に不吉なイメージとして観客に意識づけしておくことにより、最低限の演出だけで嫌な不安感が十二分に高められる。

そして最大の見どころはやはり銀玉。ヒューンと飛んでシャキーンと刃が出てグサッといってギュイーンってなってドピューとかセンスの塊でしかない。何言ってんのかわかんないと思いますが、是非見て欲しい!そんで銀玉目線の映像もめちゃくちゃカッコイイ。そんなシーン本来であれば不要なのに、あえて入れるあたり並々ならぬ映像へのこだわりが見えますね。

流れ出る黄色い血液とか、箱の中で蠢く指とか、「ボ〜イ!」とか、印象的なサントラとか、全編を通してバックに流れる虫の声とか。大好きなものがたくさん詰まってて、ずっとテンション上がりっぱなしでした。

トールマンと霊廟に隠された秘密が明かされていくにつれ、どんどんとオカルト色が強まっていくのですが、二本のポールの向こうの映像のインパクトが凄まじくて、クトゥルフ的な底知れぬ恐怖が本作の全体を覆っている不穏な空気感を明確な絶望へと陥れる。死してなお逃げ場のない責め苦を味わうことの恐怖は計り知れない。まさに地獄。そう考えるとトールマンは紛れもなく死神。

両親を亡くし友だちもいないマイク少年が心の中に抱える孤独の感情。唯一の支えだった兄が都会へと出て行くという話が出たために、膨れ上がり耐えきれないほどに肥大化した「現実への絶望」に対する「夢・空想」というイマジネーションの世界からの抵抗を描いたのが本作だと思いました。

だからこそ兄を誘惑するものは消え去る。自分から全てを奪っていく「現実という悪魔」に見立てるために具現化した「悪」という存在が必要であり、その悪(という現実)に対して大好きな兄と協力して立ち向かう。それこそがマイク少年の望む形であり、トールマンとの戦いは無慈悲にマイク少年を陥れようとする現実への必死の抵抗なのだろうと思いました。結局は現実が一番不条理だということ。というわけで本作は「お兄ちゃんどこにもいかないで!一緒にいてよ!」というお話なわけです(笑)マイク少年かわいいわ!

ドンコスカレリ監督が実際に見た夢をモチーフに製作された映画ということですが、監督の実生活で家族との別れ等の辛い出来事があったのではないかと想像してしまうような内容ですが、実際どうなんでしょう…。

余談ですが、映画ドットコムが運営するホラー専門VOD「OSOREZONE」がサービスを開始したので早速登録しました。正直現状のラインナップがかなり貧弱。作品数が少ないし、他のVODサービスでも見れるやつを引っ張ってきてちょっとだけプラスしましたって感じなのが残念。しかもやたらと止まるし。とりあえずこれと『バスケットケース』シリーズ見たら解約かな。日本版Shudderみたいなのを期待してたのに…。無料期間内に魅力的な更新が来たら継続しよ。
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