あんときの井上

世界の終わりからのあんときの井上のレビュー・感想・評価

世界の終わりから(2023年製作の映画)
3.1
世界を終わらせたい想いが強い監督の情念が暴走して勝手にジブリを実写化したみたいな映画。

是枝官房長官を悪役にしたのには是枝監督との何かがあるんじゃないかと邪推してしまうぐらい、監督の個人的な想いが詰まった映画に思える。

本作の主人公であるハナは、世界を救えないから世界を諦めたのではなく、こんな残酷な人がいる世界を救いたくないから、世界を救えるのに世界を諦めた人である。

それはすなわちハナ自身もそんな残酷な人と同じではないのか?

それについて映画内での言及ないし示唆は見当たらないので、それに関して肯定も否定もしないのは映画の傷に思える。

ちなみに、早くに事故で亡くなった両親からハナは愛されたかったようなのだが、通常それまで愛されていたのなら、もっと会いたかったとか、死んで悲しいみたいになるものの、ましてやハナの幼少期の回想では両親から愛されているようにも見受けられるので、ハナの認知がズレていること、つまりその時既にハナは闇堕ちしていたとの証左になり得ないだろうか?だからこそ、自分が嫌ってる残酷な人と自分も同じだということに気づけなかったのは、認知がおかしくなっていたからであろう!?

一度世界を終わらせて新しい世界を創る、ハルマゲドン的な思想の映画は去年も鑑賞したことがある。

それは、是枝監督の『怪物』だ。

ラストシーンはそのように解釈することができる。

実は、2人は思想的にとても親和性がある監督同士なのかもしれない。

私は、ハルマゲドン的な思想は闇堕ちした人による思想的敗北または怠惰だと考えているので、両者の映画の世界観は全く好みではない。
あんときの井上

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