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ノランムン:韓国シネフィル・ダイアリーのTwinYorksのレビュー・感想・評価

4.3
ポン・ジュノ監督も所属していたソウル近郊の大学生が参加していた30人くらいの映画サークル「ノランムン」(黄色いドア)についてのドキュメンタリー。すごく良かった。
それに、今となれば伝説的なそんざいである、学生自主映画集団「チャンサンコンメ」について、大きな配信プラットフォームの作品で言及されたのは初めてじゃないだろうか?
1980年の光州事件をきっかけに、韓国では学生や労働者の権利を訴える映画団体がいくつかできた。その中でチャンサンコンメはスターだったと、ポン・ジュノ監督の貴重な証言がなされる。その中でノランムンは草野球のような存在だったと笑いながら・・・。
でも、その中からポン氏のような世界的な大監督が生まれたわけだ。
しかしこのドキュメンタリーでは、ポン監督の今の栄光から逆算して持ち上げたりするようなことはしない。それに、最後にノランムンのメンバーの現在の仕事が紹介されるが、ポン監督を最後(トリ)に持ってくるようなこともしないし、メンバーの誰かがポン監督をことさら賞賛するわけでもなく、ノランムン時代に制作したストップモーションアニメ「ルッキング・フォー・パラダイス」についても、おもしろかったというひとと、そうでもなかったというひとの双方のコメントをコメディタッチで紹介する。でも、その作品の中のゴリラの人形のように、みんな地下から這い上がって何かを探し求めようとしていたんだな、という総括は納得感があった。
いわれてみればポン監督の作品には地下空間がよくモチーフとして出てくる。それが処女作からだったとは、それも発見だった。
それぞれの青春や、その後の人生、前向きな老いの姿がそこにはあって、なんだか最後の場面に進むにつれてジーンと来てしまった。
映画制作に興味がある人やポン監督のファン、映画でなくともなんらかのサークルなどで懸命に取り組んだ経験があるひとなら、誰にでも胸に響く要素があるのではないだろうか。
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