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旗本退屈男 謎の七色御殿のpsychedeliaのレビュー・感想・評価

旗本退屈男 謎の七色御殿(1961年製作の映画)
3.0
ここまでくると何作目なのかさっぱり分からない。分かっているのは映画版退屈男はこの後二作で打ち止めということだ。つまりシリーズ最後期の作品ということ。
とはいえ,それまでと打って変わったギミックがあるわけではなく,普段通りの退屈男だ。今回は"東照宮"に対して"西照宮"という架空の宮が舞台で,将軍病床の折,幼くしてここに預けられた御落胤が実は....という話。シリーズ定番の"天下を脅かす陰謀"の核が本作ではこの宮中にあり,筋も宮の境内と,それから御膝下の村落へつづく岩屋の道にて展開されるため,前作の『謎の大文字』などと比べるとかなりスケールダウンした印象。しかし,それが通例の荒唐無稽さと主水之介の尊大さを希薄にしていてイイ感じ。主水之介のキャラクターは,東映作品よりも松竹での『江戸城罷り通る』のそれに近い。
監督は佐々木康で,この人は面白そうな筋を抑揚なくだらだらと撮る早撮りの名手であるが,本作は脚本そのものにケレン味が効いていて,少なくとも退屈はしない(ギャグじゃないよ!) ネタバレになるから云わないけど,意表を突かれるようなトリックが散りばめられている。これが楽しい。結束信二ってこんなくすぐりの効いた脚本を書く人だったかな。
立ち回りに関してはやっぱり松田定次に遠く及ばない。岩屋での殺陣は所々暗くて見えにくく,松田定次ならここでもっと明瞭に魅せてくれる。敵を迎撃しながら宮中に入って,岩屋への隠し戸を探している最中に追撃がないってのも考えもんだね。まあ,そんなこと数えだしたらキリがないけどさ。
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