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モンキー・キングのLCのレビュー・感想・評価

モンキー・キング(2023年製作の映画)
3.6
面白かった。

The Monkey King と言えば、日本では孫悟空の名前で有名だと思う。
しかし、作中でも幾つか例が出てくるんだけれど、物語の中で描かれる彼の性格や役割といったものに沿って、色々な名前が登場し使い分けられるキャラクターでもある。

例えば、英語の「猿の王」はたぶん、「美猴王(美しい猿の王)」から来ている。猿の群れの中での彼の立ち位置を示す名前。
では「孙悟空(孫悟空、目に見えぬものの存在に気付く者)」という名前はというと、これはとある道教の仙人からもらったもの。
「齐天大圣(斉天大聖、天=神と同等の大聖人)」は、作中の通り、天界で暴れた際に確認できる強さと野心を表し自称する名前である。
その他にも、「孙行者(修行する者、三蔵法師と旅に出る時に使用された名前)」とか、「弼马温(馬を管理する者、天界で悟空に侮蔑の意味で与えられた役職から来ている名前)」とか、「心猿(心の中に猿がいるかのように、気持ちが忙しなく変動する彼の性格を指す名前)」とか、本作では出てこない名前もあるものの、これらの呼び名が反映されている描写はチラホラあったりして、なかなか面白い。

彼が持つ能力が様々描かれる中で、如意棒はとても可愛かった。アダムスファミリーのハンドみたいな可愛さ。
この棒は、定海神针(海を鎮める神の針)とも呼ばれる。作中の Dragon King は「东海龙王名敖广(敖廣という名の、東の海の龍王)」のことだと思うのだけれど、彼の城で海の重りとして保管されていたとか何とか。
ちなみに、彼は「水の世界の大ボス」と健気な2匹組に紹介されるが、東西南北の海の4龍王の中で1番強いらしい。中国文化では東が最も重要であることと関係あるかもしれないね。「東西南北」という言葉も、東が1番先頭に来ているし。

心満たされぬ者たちが、戦いに明け暮れたり何とか如意棒を盗もうとして嘘をついたりしながら旅を紡いでいく。どちらも忙しなく揺れる心に振り回されながら絆を育んでいく。
落ち着きなく暴れ回る猿の王は、どんなに物語が進んでも手の焼ける厄介者であり続けるように見えるものの、お釈迦さまも女の子も決して彼を諦めなかった。
語りかけて、岩の中に閉じ込めることになった後も気にかけ続けた。
そして、お釈迦さまの言った通り、世界が彼を必要とする時が来る。
女の子は、どんなに生きても人間としての寿命が精一杯で、そう言う意味では猿の王が持つ時間は比べものにならない程膨大だ。
彼は焦る必要がないのだ、これから先ゆっくりと色々なことを見知っていければいい。そして女の子は、遥かに短い命で、彼より速く駆け抜ける必要があったんだろう。
岩の外側と内側に隔てられた彼らは、違う速度で流れる時間の中で、お互いに自分の想いを託せる存在なんだね。
彼女との交流があったからこそ、彼の運命も書き変わったんだろう。

タピオカミルクティーのハチミツ入りは少し試してみたい。タピオカ抜きで。そういえば、私は映画館でアイスミルクティーを選択しがち。
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