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コット、はじまりの夏のmasayaのレビュー・感想・評価

コット、はじまりの夏(2022年製作の映画)
4.1
おっとりした9歳の少女コットが、母親の臨月をきっかけに親戚の老夫婦の許に預けられる。大家族の中で居場所が無くて、それが当たり前だと思って生きてきた彼女が、誰かから大切にされるという経験をすることで新しい自分を見つける。一生忘れることはないだろうひと夏の記憶。

主役のコットちゃんが良い。体は大きくなったけど内気で、家でも学校でも周囲に馴染めない、言葉少なで俯き加減の少女。アイリンとショーン夫婦に迎えられてから、心を通じ合わせていくまでのぎこちないやり取り。全力疾走で取り戻す、本来の子どもらしさ。

夫婦の包容力とあたたかな眼差し。それを無条件に受けていたコットは、伝えられていなかった過去を知ることで二人の悲しい経験に思いを寄せる。そこに自分が居ることの、ただそれだけでかけがえのない価値。互いに互いの幸せを願う、その相手は実の親子じゃなくたってあっていい。

ラストにはどんな意味があるのだろう。行く先には逃げられようもない人生がある、だけど、どんな未来が待っていようとも、私の居場所はこの温もりだ。いつでもそこに父が居て、母が居る。
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