ぶみ

妖怪の孫のぶみのレビュー・感想・評価

妖怪の孫(2023年製作の映画)
4.0
彼がもたらしたのは美しい国か、妖怪の棲む国か。

内山雄人監督によるドキュメンタリー。
第90、96代内閣総理大臣、故・安倍晋三の素顔に迫る。
内山監督に、企画が昨年急逝した河村光庸、ナレーターの古舘寛治に加え、制作がテレビマンユニオン、配給がスターサンズというスタッフ陣は、第99代内閣総理大臣、菅義偉を追った2021年の『パンケーキを毒味する』と同じであることから、事実上の続篇と言えるものであり、安倍の片腕であった菅を扱った前作が前哨戦で、本作品が本丸と言ったところか。
安倍の母方の祖父である第56、57代内閣総理大臣である岸信介が「昭和の妖怪」と呼ばれていたことから、その孫としたタイトルのように、安倍政権にを発端に世の中に蔓延している空気を妖怪に例え、そのアニメーションを時折挿入し、箸休めとしているスタイルも前作と同じだが、そういったエンタメ要素は少なくなっており、より純粋なドキュメンタリーになった印象を受ける。
内容としては、長期政権の弊害を物の見事に切り出しているのだが、最も印象に残ったのは、安倍自身が語る本音の言葉で、成功、失敗は関係なく、「やってる感」をいかに出すかが重要だったと言うこと。
これは、まさに真の実力ではなく、要領の良さだけで上り詰めた人間だからこそ言える本音であり、処世術の核心を突いている反面、いかに見せかけの政治だったかを証明しているものであり、そんな路線を受け継いでいる人々が蔓延る近年の政権は何をか言わんや。
アラフィフの私ですら平均年齢を下げていた観客の年齢層の高さに、今後の日本を憂うしかないが、それでも未来がすこしでも良くなるように一人一人が考えるキッカケとしてもらいたい一作。

何事もうまく見せかけることが大事。
ぶみ

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