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僕たちの城のdm10foreverのレビュー・感想・評価

僕たちの城(2021年製作の映画)
3.8
【なつのおわり・・・】

MyFFF駆け込み視聴の思い出しレビュー。

――夏の終わり。静かなブルターニュの農村でサイレージの詰め込み作業が始まる。
トウモロコシの収穫時期、12歳の兄ジェイコブと8歳の弟テオは大きな家にたった二人で暮らしていた。
この家は彼らにとっての王国となり自由に暮らしていたが、何故か上の階に上がることだけは禁じていた・・・(あらすじ)

これもいわゆる「フランス映画だな~」っていう余韻が残る一本。
子供だけで生きていくことを余儀なくされている時点で「火垂の墓」のような切なさも感じつつ、どこか「禁じられた遊び」のようなメルヘンな部分も感じつつ・・・っていうちょっとダークな作品。

物語では何故彼らが二人きりの生活を強いられているのか等について多くは語られず、観る者の中でストーリーに肉付けをしながら膨らませていくような余白を感じさせる作りになっている。


大切な弟の世話を一生懸命する兄と、そのお兄ちゃんが大好きな弟。
「子供だけの生活」っていう設定がある以上、どれだけメルヘンチックに描いたとしてもやっぱり「ご飯」「お金」「夜(暗闇)の恐怖」など、『親(大人)がいることで得られる無条件の安心、安定』はなく、いずれ生活が破綻するのは目に見えている。

それでも、この二人は逞しく生きようとする。
何故なら「そう決めたから」。

でも夏はいつか終わる・・・。
食料も底を尽き始め、二人はいつまでもこのままではいられないということもわかっている。

「外にいたのかい?」
「だって家の中は臭いから・・」
「家の中で遊ぼう」
「いやだ」
「どうして?」
「・・つまらないから」
「遊べ!遊ばないとダメなんだ!」
「・・・まるで父さんみたいだ」
「・・僕はアイツみたいにお前を殴らない」

テオの体中に残る痛々しいアザ。
夢の中でジェイコブを苦しめ続ける銃声。
シャツに残る血の跡。
段々と臭いがキツくなってきた家の中。
そして、決して入ってはいけない「2階の部屋」・・・・

~僕たち、地獄へ行くのかな~

何が起きたのかは最後まで語られないが、どうやっても破滅的なラストに向かって進んで行くことは想像がつく。
二人が背負い込むには余りに残酷な現実だし、こんな業を背負わせるにはあまりに幼すぎた。

全てはジェイコブがテオを守るための「決断」。
せめて、この少年たちの未来が明るいものであってほしいし、いつか二人だけの農場で穏やかに暮らしてほしいと願わずにはいられない切ないラストだった。

何処となく青みがかった映像は、夏の農場のイメージとはおおよそかけ離れた「暗い」印象すらもうけたけど、それがまたこの物語のトーンともマッチしていて、不思議と印象に残る作品でした。
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