ぶみ

コヴェナント/約束の救出のぶみのレビュー・感想・評価

コヴェナント/約束の救出(2023年製作の映画)
4.5
たとえ地の果てでも、必ず俺がつれて帰る。

ガイ・リッチー監督、ジェイク・ギレンホール主演による実話から着想を得た軍事ドラマ。
アフガニスタンの最前線からアフガン人通訳に救出された主人公が、タリバンに狙われ行方不明となってしまった通訳を助け出そうと、再びアフガニスタンへ向かう姿を描く。
主人公となる米軍曹長ジョン・キンリーをギレンホール、アフガン人通訳アーメッドをダール・サリム、ジョンの妻キャロラインをエミリー・ビーチャムが演じているほか、ジョニー・リー・ミラー、アレクサンダー・ルドウィグ、アントニー・スター、ボビー・スコフィールド等が登場。
物語は、前半がタリバンの爆発物製造工場を探すべくアフガニスタンに行ったキンリー率いる部隊を、後半では、消息がわからなくなってしまったアーメッドを助け出そうとして再度自費でアフガニスタンへ赴くキンリーを中心に据える二部構成として進行、その合間でアメリカでのシーンが挿入されるものの、大半は乾いた風が吹き荒ぶアフガニスタンを舞台としており、終始、いつどこからタリバンが襲ってくるかわからない緊張感に包まれている。
何より、ひと癖あることから他部隊では馴染めなかったアーメッドの才能を買ったキンリーと、それに対し全力で職務を遂行するアーメッド、その後瀕死の状態から助けてくれたアーメッドに対して報いようと一人助けに向かうキンリーの姿が無理なく自然な形で描かれているため、その行動原理を観る側に納得させるには十分なもの。
そんな二人のドラマに瀕死のキンリーを基地まで運んで連れ帰るロードムービー的要素が盛り込まれていたり、静寂な空気の中、突如始まるリアルな戦闘シーンといった緩急が絶妙につけられていたりするため、胸熱くなること必至。
特に、ここ最近、『オペレーション・フォーチュン』や『キャッシュトラック』と、ジェイソン・ステイサムを主演に据え、テンポ良い会話劇を特徴としているものの、どちらかと言えばオーソドックスなクライムものが続いていたガイ・リッチー監督作品ということで、本作品でも、悪い意味でリッチー監督らしさが出ていたらどうしようという一抹の不安があったのだが、なんのなんの、コメディ要素や、くだらない会話等は一切廃され、シリアス路線に全振りしていたのは、これもまた監督の本気度合いが伝わってくるところであり、こちらも真剣に観ることができた次第。
終盤の舞台が、仮面ライダーや戦隊モノシリーズに出てきそうな既視感満載のダムだったのが気になったのだが、裏を返せば、そこ以外は映画として完璧な仕上がりと言っても過言ではない。
公式サイトによれば、あくまでも、アフガニスタン問題とアフガン人通訳についてのドキュメンタリーを観た監督が、そのエピソードをもとにフィクションとして完成させたとのことであるため、実話と脚色の境界は不明ではあるものの、人間らしさがありながらもプロフェッショナルな仕事を遂行し、結果互いの恩義に報いようと、単に友情や絆という言葉だけでは語れない二人の姿に釘付けとなるとともに、戦争そのものはテーマに置かないという変化球な作風かと思いきや、これでもかと直球で人間ドラマと戦争の不条理さを投げ込んでくる秀作。

ジョン、帰ろう。
ぶみ

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