バター醤油ご飯

夜明けのすべてのバター醤油ご飯のレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
5.0
2024.2.10、レイトショーで鑑賞

余韻が止まず、思い立って翌2.11に再度レイトショーで鑑賞

2024.2.17レイトショー鑑賞

2024.2.25レイトショー鑑賞

2024.3.8午前に鑑賞

2024.3.14最後の鑑賞(また再上映希望したいし、配信・円盤も待っています)

何の涙か分からないけれど何度も涙が流れました。心が揺さぶられた、とも違う...何だろう、人が生きる、という至極普通のことを観ているのに心が刺激されて泣きました。

観終わってから帰路につく時、なんか余韻が凄くてずっとじーーーんと。ふわーっとじーんと。

パニック障害を患う山添くんとPMSに苦しむ藤沢さんが中心で物語は動くけれど、2人をそっと支えてくれる人達にも辛い過去を持つ方が。

決して2人の症状が良くなったわけでも、治ったというわけでもない。何を食べても美味しくない、作品の冒頭では顔に生気が無く黙々と簡易的な食事でとっていた山添くんは中華まん(中身なんだろう?)を美味しいと感じたし、今の自身の環境にほんの少しずつだけど慣れてきたのが伝わったし。今頃藤沢さんはどうしているのかな。藤沢さんのお母さんはどうしているのかな。藤沢さん親子が元気で居てくれたらいいな、と願わんばかり。

あったかい映画だった。こんな感情になった作品は人生でほぼ初めてかもしれない。

柔らかな光と静かな闇。効果的な雨のシーン。陽の光を少し眩しそうにしながら自転車を漕ぐ山添くん。この何気ないシーンですら涙が止まらなかった。決して山添くんの成長などでは無い。パニック障害を発症する前の元々の山添くんを少し垣間見れた感じというか。

この作品に出演された全俳優さんが間違いなくベストアクトなのは大大大大前提で、

松村北斗さん、上白石萌音さんが山添くんと藤沢さんを演じてくださって本当に良かった。物凄く素晴らしかった。文句なしです。正直演技に見えなかったんです。本当に役の落とし込み方が凄い。

特に山添くん役の松村北斗さん、今後の映画界で光輝くスターになるのだなと感じました。スクリーンに映った時の画の説得力、かといって持ち前のビジュアルがいい意味で誇張し過ぎない、作品にそっと彩りを添えるさり気ない感じ、空気感。堪らないですね。リアル。別作品からその演技力に惹かれて個人的に注目していましたが今作も素晴らしい。満点です。もっと役者仕事をして欲しい。繊細さと今っぽさの共存が本当に良い。

【動(感情の)】のシーンが多い人(今作だとPMSの症状が出ている時の上白石萌音さん)に目が行きがちですが、上白石さんの【動】の受け手の松村北斗さんが達者でなければ【動】は際立たないなぁと。逆も然りです。松村さん、上白石さん素晴らしかった。本当に。

山添くんの電車に乗ろうとするシーン、社内での発作...観ているこちらまで苦しかった。リアル。電車のシーンで呼吸が少しずつ乱れ、小さく顎のラインと喉が動く所の描写が細かい。

このお二人を見守る立場の皆さんもまた素敵で。栗田社長はじめ栗田科学の皆さん、元上司の渋川課長、彼女の大島さん...

栗田社長と渋川課長さんの繋がりを知り胸が痛みました。でも大切な人を亡くしたお二方だからこそより人に優しく出来たのかな、と。渋川課長の涙にそっと「どうぞ」とハンカチを渡すあの子。親子でどうぞ?と思ったけれどその関係性がパンフレットで分かり号泣。。。。栗田社長さんの多くは語らずとも目と表情であたたかく二人を見守っている感じが珠玉。栗田科学の社員さんの雰囲気がもうあたたかくて。

藤沢さんのお母さん、大変なリハビリを頑張ってる姿は堪らなかった...藤沢さん親子あったかい。きっと手編みのミトンを編むことも前より難しくなっているかもしれない、それでも愛娘の為にせっせと編んでくれている。その心に胸が締め付けられる。

山添くんと藤沢さんのナレーションの場面......お二人とも声優経験が有るのが納得、アニメーションのCVの時とは違うけど、穏やかで耳心地が良くて心に染み渡る良い声なんですよね。ミネラルウォーターみたい。

前職へのプライドなのか...1人小綺麗な服装で仕事し、薄暗い中丁寧にアイロンをかけていた山添くんがあるシーンで徐に栗田科学の名入り作業着を羽織り、自転車に乗って行くシーンで静かに涙を流しました。画が美しくて尊くて。なんて事ない画なのに、光が美しくて。眩しそうにする山添くんの瞳にも心にも少し光が灯ったような。

少し粗めの画質がまたあったかくて。昔のインスタントカメラの写真、みたいな。人物や建物、景色も素敵に映って、特に光と夜の暗さが映えて。ものすごく美しかったですね。

エンドロールの栗田科学の社員さんの休憩時間....えっと、1.2.3.4.5.....あれ??もしかしてあのお方は.....!!!!あれ?あの歩いていた方.....!!!?この作品はエンドロールも素晴らしくて劇場にライトがつくまで是非お席で観て楽しんで頂きたいです。

原作者の瀬尾まいこ先生、監督の三宅唱さんはじめこの映画に携わった全ての皆さんに最大の賛辞を送りたいと思います。

この先ずっと心に残るであろう作品を観させて頂きありがとうございました。数年単位で遡って考えても自分の中でベストワンです。

~2024.2.21~
ベルリン国際映画祭フォーラム部門正式招待、改めておめでとうございます。ワイドショーで御三方が拍手喝采の中壇上に歩き立つ姿、美しかったです。

~2024.3.5~
公式Xで上映される映画館が少しずつ追加された旨を知る。まだ作品を観られていない地域の人たちへ少しずつ観られるチャンスが増えていくのは嬉しい限りですね。どうか1人でも多くの方がこの作品に触れられますように。。。

~2024.4.21~
現時点ですが、海外の映画祭に招待や出品が続いており、とても感慨深いです。世界中の沢山の方に愛されますように。そして、全国各地のミニシアターでの上映情報が少しずつ増えていて凄く嬉しいです。長く愛されますように。

~2024.5.15~
SNSで円盤化の報を目にし即予約しました。住んでいる県ではもう上映終了してしまっているので嬉しいです。早く山添くん、藤沢さん、栗田科学の皆さん、出演者の皆さんに会いたいな。