Omizu

夜明けのすべてのOmizuのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.5
【第74回ベルリン映画祭 フォーラム部門出品】
『ケイコ 目を澄ませて』三宅唱監督作品。ベルリン映画祭フォーラム部門に選出されるなど国内外で高い評価を得ている。

これはとてもいい。配信におりてきたら観ようかなーと思っていたが、このタイミングで観ることが出来て本当に良かった。

浅い言い方だけど「人にはそれぞれ事情がある」んだなぁ。特にこれは個々人が抱える障がい、トラウマの話であり、まさに心の問題を抱えている自分には突き刺さるものがあった。

極めて文学的な表現に包まれた一作であり、特に最後は心にしみた。全然違うけど、『ガラスの仮面』で「どんなに影が強くても光がなければ影はできないのよ」というセリフを思い出した。

みんなそれぞれに事情があって、それとの妥協点を求めて日々生きている。それが社会というものなんだろう。だけどそれっていいのかな。障がいを隠し、上手く付き合って恐れながら生きるなんて。日本社会ってなんて融通が利かないのか。

一つ一つは個人の話ではあるけど、全体を通すとこんなに問題がありまくりの日本ってどうなのと思ってしまう。個人の話をしながらも背景にある社会というものの残酷さが浮かび上がってくるような演出が見事。

非常に美しく、そしてリアルな人間を切り取った一作と言えるだろう。『きみの鳥はうたえる』が苦手で『ケイコ』を観ていないのだが、これを観てしまうと『ケイコ』も観ないとと思えてくる。非常に示唆に富んだ素晴らしい作品だった。今年の映画のハイライト。
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