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逃げきれた夢のmasayaのレビュー・感想・評価

逃げきれた夢(2023年製作の映画)
4.2
高校教諭を勤めあげ定年間近の男が、自らの病をきっかけに人生を見つめ直す。順風満帆とは言えないまでも、まずまずだと思ってきた今までの生き方だけど、改めて家族や友人と向き合ってその噛み合わない会話に気づかされる、如才なくやってきた中で蔑ろにしてきたものの大きさ。

教え子や部下の話をよく聞くポーズを取り、その場で相手が一番安心しそうなことを言う。大事なことも相談せずに一人決めする。それで何十年もうまくやってきたから。うまく逃げ切れた人生。何のことはない、ずっと周りに負担を押し付けていただけだったのだけど。

自らが作り上げた自分像は温和で親身で寛大、でも気づかなかい所に不遜さが現れたり、古い男性性が顔を出す。理想像が取り払われた後に残るもののなさがあまりにも自業自得で惨めで魂が凍る。ここの光石研さんの見事で残酷な演技に痺れる。

光石さんあればこそこのテーマが成立したと言っても全く過言ではないけど、他の出演者の演技も光りまくってた。娘役の工藤遥さん、友人役の松重豊さん、それから元教え子の吉本実憂さん。光石さんと吉本さん、北九州弁ネイティブ同士が本音を曝け出す終盤の対話にゾクゾクした。
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