ちょげみ

SAND LANDのちょげみのレビュー・感想・評価

SAND LAND(2023年製作の映画)
3.5
【あらすじ】
慢性的な水不足に悩まされている砂漠の王国<サンドランド>。
町の保安官を務めているラオは砂漠のどこかにあるという幻の泉を探し求め、魔物のシーフ、悪魔の王子ベルゼブブと共に旅に出る。


【感想】
鳥山ワールド全開でありながらドラゴンボールとは趣を異にする作品でした。
特徴的なキャラクターデザイン、愛を感じるメカデザイン、所々のギャグなどは今までの鳥山先生を感じさせます。

テンポよく進むストーリーは面白く、無駄のない構成も相まって子供でも見やすい、肩肘張らずに見ることのできる作品になっていたんじゃないかなと思います。


しかし、主人公のラオの性格は今までの鳥山明作品(ドラゴンボール)にはあまり見られないタイプでした。
ラオは過去国王軍の将軍であったのにも関わらず今現在は町の保安官として働いていて、戦いを好まずなるべく誰も傷付けないような形で戦闘を終わらせるよう誘導しています。
自分の命を狙う国王軍の兵士相手でもそのスタンスは変わらず、操縦席を狙って効率よく勝ちを引き寄せるのではなく、無力化という形に追い込むように工夫して戦闘を行います。
そんなラオの慈愛溢れる戦い方はドラゴンボールとは一線を画していて、新鮮さを感じました。

そしてそんなラオと対照をなすかのように配置されているベルゼブブが今作品に見事な色合いを加えていました。
「マッドマックス 怒りのデスロード」を想起させるような、終末世界に近いようなギリギリの世界にて、ベルゼブブの存在は一際目立ちます。
重苦しさや暗さに押しつぶされるようなことはなく、むしろ草原の中を駆け巡る馬のように軽快でイージーゴーイングな性格は、水気がなく乾き切った世界に差す一条の光明のようでもあり、彼とラオ、そしてベルゼブブに振り回されがちなシーフとのトリオがいい味を出していました。


総括すると、期待してたようなアクションシーンの分量がかなり少なかったことには落胆したけれども、映画を見る前の予想とは違う魅力に溢れた、鳥山先生が好きなファンにとってはたまらない作品だったかな。
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