ベルベー

ミッシングのベルベーのネタバレレビュー・内容・結末

ミッシング(2024年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

「だれかtoなかい」で神田伯山が「常に120%ではダメ、120%の力で60%の芝居をする」というようなことを言っていたのだが、本作の石原さとみに送りたい言葉である。やり過ぎだ。

確かに上手い。気合いが入っている。でもそれは作品や観客のためではなく、自分のためじゃない?演技が上手い私を見て!というのが前面に出過ぎで、作品の方を向いていない。重い題材だがそこではなく、石原さとみの常にフルスロットル!カメラここを映せ!!の圧が凄い芝居で疲れてしまった。題材が題材だけに、自分本位なその姿勢に疑問を抱いたりもした。

題材に対して、という意味では吉田監督の脚本にしてもそうで、綺麗で上手く、映画としてしっかりしているのだが、しっかりしすぎていて「物語ぽさ」が際立っている。ここで落とすまで落として、こっから徐々に立ち直っていくのね…と読めてしまう。題材を考えると、予想できる物語としての綺麗さは逆効果だったのではと思う。多少バランスが悪くても良かったのでは。メタ的に言ってしまうと「空白」と構成一緒だしな…とかも。

主人公の石原さとみパートは綺麗に締められている一方、中村倫也パートはもう少し巧い締め方はなかったのかなと気になった。「優しさから最も残酷な希望の持たせ方をしてしまう」という行為の重さが描かれていただけに、最後のシーンが「アザラシいないっすねー」では締まらない。「空白」の寺島しのぶもそうだったが、優しいがズレている人に対して冷酷だよね吉田監督。

※あと、犯人探しの映画ではないのでこれ書くのはナンセンスなんですが、多分裏設定的に犯人決められている気がします。明らかにフックになっているのに回収されなかったセリフがあるので。でも該当の人物が犯人だったとしたらサスペンスぽさが増しすぎて切実さが薄まるので、完全に余談です!
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