ベビーパウダー山崎

ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語のベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

3.5
ウェス・アンダーソン組いつもの馴れ合いメンツではなく、本気の芝居が出来る役者を呼び寄せてのアンダーソン劇団。これも架空な人物の偽自分史。背景は書き割り、主要な役者が中心も脇も(何役も)演じるガッツリとした演劇的アプローチ。
ダラダラと話している内容は、ためにならない説法みたいでよくわからない。最近のアンダーソン映画での言葉やセリフは、その世界を知るための「情報」(ヒント)の一つぐらいにしか意味を持たない。映画的な起伏ではなく、一枚の絵画を見て何処に注目するのかは人それぞれ。虫とかの観察に近く、アンダーソンは「映画」をより水平にしようとしている。死も喜びもドラマチックなポイントも同じテンションで描き、その不自由な自由さを俺たちがどう受け取るか。客が逆に試されている。終わり方が掴みどころがなく綺麗。なんかラストだけ何度も見てしまった。
アンダーソンの世界に一瞬で溶け込む器用さと、それでも自分の色はしっかり残していくベネディクト・カンバーバッチは良い役者だと改めて思った。先日『セクシー・ビースト』でキチガイのベン・キングズレーを見たばかりだったので、まだ現役バリバリに長セリフで勝負できるのは普通にスゲーなあと感心してしまった。