らんら

首のらんらのネタバレレビュー・内容・結末

(2023年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

「首」に取り憑かれた男達の茶番劇。

久しぶりに映画館で沢山笑いました
シニカルなブラックコメディです。

エンドロールで秀吉役に「ビートたけし」の芸名が表記されていたのでこれは間違いなくコメディです。

バイオレンスと笑いの共存、シリアスの中にあるリアルな笑い。監督が生粋のコメディアンなだけあって、観客の笑いを生み出すつくりが凄く上手いです。

映画としては、ラストの秀吉のセリフが全てです。

仁義や忠義を口にし、衆道に耽り、敵の首を取り「武士道」を全うする。

しかし、百姓出の秀吉はそんな武士達のプライドや慣習には全く興味がないしむしろ馬鹿らしいとすら思っています。

そして実際に生き残るのは真面目に武士道を遂行する光秀のような男ではなく、狸の家康や、汚い手も平気で使う秀吉のような人間なのです。

劇中で秀吉は小賢しくかっこ悪いように見えますが、客観的に見れば可笑しいのは周りの武士達です。

本来かっこよく描かれがちな戦国武将がこの映画ではとても滑稽に見えて面白かったです。

全編を通してどの人物達も異常なまでに「首」に執着し、ひたすらに「首」を取ることを目指しています。しかしそれも所詮形骸に過ぎず、実際死んでいれば敵の首などどうでもいいし本人の首かどうかの真偽もくだらないことなのでしょう。

どいつもこいつもイカれていて阿呆ばかりで、「命」が菓子のオマケのような扱いです。だからこそ、殺したかつての仲間に最後まで囚われている茂助の描写には救いを感じました。


そして本作では皮肉的に描かれていた「衆道」ですが、女性の私から見ると少し羨ましくもありました。

女は男ほどプライドが高くないため余計な労力や犠牲を嫌いがちです。戦国時代などまさにそうでしょう。プライドの為なら自分の腹を切れるし部下を死にに行かせます。
その男同士にしか理解できない領域で、独得な関係が生まれているのが面白いです。

女性の多くは信頼し合える恋人と「愛情表現」の一貫として身体を重ねたがりますが、この映画での男達は「愛」なんて素敵な言葉で形容できる感情でセックスをしていません。どうしようもない昂り、性欲、支配欲、女には理解できないところで理解し合っている悦びと思想的な繋がり…そんなめちゃくちゃな感情を性行為でぶつけ合っている様にロマンを感じました。


あと中村獅童の演技がめちゃくちゃよかったです。

アクションシーンはリアル路線なのかネタでやってるのかよく分からない部分があってあまり好みじゃなかったです
らんら

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